月1原発映画祭ニュースレター第16号

「月1原発映画の会」スタッフの小林です。
月1原発映画祭ニュースレター第16号をお届けします。

■ 今月のトピック「小型モジュール炉って何?」

気候変動対策のひとつとして、「新型炉」「第4世代炉」などと呼ばれる次世代原子炉に期待する声があります。現世代にも次世代にも原子力は要りませんが、どんなものなのか知っておきたいと思いました。
新型炉と呼ばれるものには「小型モジュール炉」「高速炉」「高温ガス炉」「溶融塩炉」「超臨界圧水冷却炉」「進行波炉」など、いろいろとあるようです。前回のニュースレターの中に「日立とGEが小型モジュール炉をカナダの電力会社から受注」「アメリカがルーマニアに小型モジュール炉を導入する計画」などのニュースがあったので、今回は特にこの「小型モジュール炉」について調べてみました。

◆ 小型モジュール炉(SMR=Small Modular Reactor)の特徴は・・・

・出力が小さい。(30万kW以下。現在の主流炉は100万kW超)
・「モジュール建築」のように、規格化された部材一式を工場で生産し、現地で組み立てる。プレハブ住宅のイメージ。

◆ 推進派が主張する利点と、それに対するまっとうな反論

(1)発電時にCO2を出さないクリーンなエネルギーで、しかも小型。

反論:小型とはいっても核反応を起こす原子力発電。発電時にCO2を出さなくても「日常的な放射能汚染」「核のゴミを生産し続ける」「事故の危険性」のデメリットを帳消しにはできない。そもそも商用展開できる炉は完成していないので、温暖化対策にも間に合わない。

(2)大型炉より冷却が早い。しかも、原子炉全体をプールに沈めておけるので、メルトダウンを起こしにくい。よって従来炉より安全。防災計画エリアも縮小できる。

反論:放射性物質を扱う限り、安全は保障されない。軽水炉(従来炉)とは違う形の事故の可能性があり、その対策も一朝一夕にはできない。原子炉が小さくなったからといって、テロや事故からの防御の必要性はなくならない。

(3)部材が規格化され工場で組み立てて現地へ運ぶため、品質管理がしやすく工事期間も短くて済む。コストが削減でき、大量生産もできて、経済性が向上。

反論:大型炉1基の代わりに小型炉数基を製造するなら、経済性は発揮できない。下がり続ける再エネのコストと競争はできない。複数設置するには立地自治体との調整も複雑になる。大量生産は、故障と改良を繰り返す原子力には向かない。テロや事故へのセキュリティコストが減るわけではない。

(4)電力需要が小さい地域や電力グリッドの未発達な地域(途上国等)への普及が可能となる。発電が終わったら撤去が容易なので、核兵器への転用を防ぐことができ、核不拡散に効果的。

反論:世界各地に設置されることになれば、それだけ放射性物質の管理が難しくなり、核兵器に転用される可能性も高まる。原発でなく、それぞれの地域に合った再エネ施設を作れば良い。

◆ 「新型炉」というけれど、実は新しくない?

小型モジュール炉にかかわらず、小型炉は実は1950年代から存在しています。
世界初の原子力発電所は、1954年にロシア(ソ連)で稼働した0.5万kWの小型炉。それ以来、原子力潜水艦や人口衛星のエネルギー源として、何百もの小型原子炉が作られてきました。現在革新的なものとして宣伝されている技術のほとんどは、すでに数十年前に考えられたものだそうです。今までに50以上の異なるデザインの小型炉が設計、開発されたようですが、建設されたのはわずか。そのほとんどは現在、一般の原子炉と同じく老朽化しているそうです。

◆ では誰が、何のために、小型モジュール炉を進めようとしているのでしょうか?

自然エネルギー財団のコラムで見つけた答えを要約すると・・・
・各国政府は小型モジュール炉を推進することで、気候対策をしているように見せかけて、その実、対策を先延ばしにできる。
・小型モジュール炉は、運転可能な形態ではまだ存在しないため、本当の問題に直面することもない。
公益法人自然エネルギー財団「小型モジュール式原子炉は、たいていが悪策だ」
https://www.renewable-ei.org/activities/column/REupdate/20210528.php

*以上、簡単ですがまとめてみました。説明の足りない部分があると思いますので、どうぞ以下の動画(原子力市民委員会と、原子力資料情報室)もご覧ください。
「新型」とはいっても危険な放射性物質を扱い、廃棄物を生み出してしまう原子力発電。小型炉などの新規開発に期待をもたせることは、再エネなど他の安全な技術への投資を妨げることになります。気候変動対策として他の国では原子力回帰の動きもありますが、福島の事故を経験した日本は、原子力をこれ以上使わないという決断をするべきではないでしょうか。(文責:小林)

(参考にした動画と資料)
・原子力市民委員会「原発ゼロ社会への道」第8回「新型原子炉」に未来はあるのか?
http://www.ccnejapan.com/?p=12286 (60分)
・原子力資料情報室 連続ウェブ講座2021第5回「新型炉問題-高速炉を中心に」
https://www.youtube.com/watch?v=z45jGKFR1Ow (60分)

・EnergyShift 「世界で注目を集めている小型原子炉は、本当に脱炭素の選択肢になるのか」
https://energy-shift.com/news/693065ca-965a-4f55-9fc3-550cf5f85cd1
・資源エネルギー庁「原子力にいま起こっているイノベーション(前編)~次世代の原子炉はどんな姿?」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/smr_01.html

■ インフォメーション


2021年12月18日、台湾の貢寮(コンリャオ)にある第4原発建設の再開を問う国民投票があり、反対多数で否決されました。日立、東芝が輸出した原子炉です。40年間、反対運動を続けてきた台湾(貢寮)市民とともに喜びたいと思います。
このニュースは、日本ではほとんど話題にされませんでした。同時に4つの議題が投票にかけられていて「アメリカからの成長促進剤入り豚肉の輸入」についてだけが主に報道されていました。

・フォーカス台湾:国民投票4件全て不成立 成長促進剤入り豚肉、輸入継続へ(2021/12/18)
https://japan.focustaiwan.tw/politics/202112180007

・ノーニュークス・アジアフォーラムジャパン:4,262,451票もの強力な反原発票をありがとう、第四原発を終結させ、核のない社会へ(2021/12/27)
http://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2534

月1原発映画祭では2013年に2回、映画『こんにちは貢寮』を上映しました。第4原発と反対運動については、ゲストトークでの報告に詳しいです。興味のある方はどうぞお読みください。
第16回報告 http://www.jtgt.info/?q=node/380
第19回報告 http://www.jtgt.info/?q=node/397

■ 一行ニュース

・北海道新聞:「核抜き条例案」蘭越町も可決(2021/12/17)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/624015/

・東京新聞:ナトリウム77トン抜き取れず もんじゅ、新機器開発必要(2021/12/23 )
https://www.tokyo-np.co.jp/article/150695

・日本経済新聞:柏崎刈羽原発7号機でも溶接不備 1000カ所以上で再施工(2021/12/24)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC2496C0U1A221C2000000/

・赤旗:独 原発3基31日停止 全廃政策新政権も継続 22年残る3基も停止、廃炉へ(2021/12/29)
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik21/2021-12-29/2021122906_01_0.html

・東京新聞:処理水タンク「23年春に満杯」は苦しい主張? 後ずれの試算でも海洋放出へ突き進む東電(2021/12/30)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/151666

・日本経済新聞:米国の高速炉計画に日本参加へ 原子力機構など協力(2022/1/1)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA010PX0R00C22A1000000/

・朝日新聞:原発は「低炭素への移行を加速」 欧州委が位置づけ方針発表(2022/1/2)
https://digital.asahi.com/articles/ASQ120HHTQ11UHBI00B.html

・朝日新聞:市民ら「金品受領、儀礼の範囲外」関電元役員不起訴で検審申し立て(2022/1/7)
https://digital.asahi.com/articles/ASQ175JR7Q17PTIL01J.html?iref=pc_phot...

■来月の予定

来月は、オンライン上映会&トークを企画中です。

■ 月1原発映画の会

問い合わせ先  eigasai2022★jtgt.info ←★を@に置きかえてください。
http://www.jtgt.info/ (地域から未来をつくる・ひがし広場内)

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