月1原発映画祭ニュースレター第15号

「月1原発映画の会」スタッフの阿部です。
月1原発映画祭ニュースレター第15号をお届けします。

■今月のトピック「気候変動と原発」


11月18日、英国グラスゴーで開かれていたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が終了しました。大気中の温室効果ガス濃度を安定させることを目的にしたこの締約国会議には、11月現在197カ国・地域が参加しています。
温室効果ガスによる地球への悪影響は深刻で、2015年の「パリ協定」(COP 21で採択)では、「世界の気温上昇を産業革命前と比べて2度より十分低く保ち、1.5度に抑える」ことを努力目標としていましたが、今回採択された「グラスゴー気候合意」では、一歩進んで1.5度が明確な目標になりました。石炭火力発電の段階的削減も明記されています。

・日経: COP26の成果文書「グラスゴー気候合意」要旨(2021年11月15日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA150WS0V11C21A1000000/

COP26期間中、温室効果ガス排出量世界1、2位の中国と米国は、メタンの排出削減での協力や、2025年に10年後の排出削減目標を国連に提出することなどを盛り込んだ共同宣言を発表。また排出量世界3位のインドは、2030年に再生可能エネルギーの比率を50%にし、2070年までに排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)にすると表明しました。
あらためて世界の脱炭素に向けての動きを見てみました。まずはヨーロッパです。

■ ヨーロッパでは原発復帰


▶︎【イギリス】ジョンソン首相は2035年には、化石燃料に頼らず風力発電や原発などで全電力をまかなう計画を掲げました。すでにイギリスの電源構成では、1990年に70%を超えていた石炭は2%未満。地形の利を活用して世界一の洋上風力発電大国となっていて、風力や太陽光などの再生可能エネルギーが4割に達しています。再エネとともに原発も脱炭素化の中核電源として位置づけており、次世代の小型原子炉の実用化に取り組むとしています。
参考 イギリスの電源構成(2020年/( )内は1990年)
①ガス35.7%(0.1%) ②風力と太陽光28.4% ③原子力16.1%(19.8%) ④その他の再エネ12.6% ⑤石油など3.3%(6.5%) ⑥水力2.2%(1.8%)⑦石炭1.8%(71.9%)

・47NEWS: COP26開催、議長国イギリスの野望(2021年11月6日)
https://nordot.app/828935864833589248


▶︎【フランス】マクロン大統領は11月9日に国内での原子力発電所の建設を再開すると発表し、原発建設が気候変動対策になると強調しました。ヨーロッパではフランスを中心に原発を推進する動きが復活しています。
EUは近く「持続可能な経済活動」のリストを策定しますが、脱炭素に資する産業への投資を促進するのが狙いで、指定された業界は公的補助を受けやすくなります。フランスやポーランドなどは、原発をこのリストに含めることを求めています。

・日経: フランス、原発建設再開へ マクロン氏「脱炭素へ必要」(2021年11月10日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR100IQ0Q1A111C2000000/

・日経: フランス先頭に原発へ回帰するEU(The Economist)(2021年11月2日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB310JX0R31C21A0000000/


▶︎【ドイツ】福島第1原発の事故を受け、メルケル首相(当時)が2022年末までに全ての原発を停止する方針を定めました。ショルツ新首相が率いる新政権は、環境重視のグリーン経済へ移行するため気候変動対策として以下の計画を掲げています。2030年までに石炭火力を段階的に廃止し、電力の80%を再生可能エネルギーでまかなう、新しい商業施設の屋根に太陽光パネルの設置を義務付ける、16の州で面積の2%で風力発電を活用し、水素エネルギーにも注力する、約1,500万台の電気自動車の導入を目指すなどです。
しかし一方で、エネルギー価格の高騰を理由に市民の半数が、2022年末の原発廃止に反対しているというアンケート結果もあります。

・朝日: 気候変動対策8年前倒し ドイツ新政権、3党寄り添い世界をリードへ(2021年11月26日)
https://www.asahi.com/articles/ASPCT6Q7TPCTUHBI00B.html

・BBC: ドイツ3党が連立で合意、ショルツ新政権が12月発足へ メルケル政権に幕(2021年11月25日)
https://www.bbc.com/japanese/59411875

■米国も脱炭素化に向けて原発を活用


バイデン大統領によって、米国は地球温暖化対策の世界的枠組み「パリ協定」に復帰しました。2050年に温室効果ガス排出実質ゼロ実現を目指す米国は、2035年までの脱炭素化を掲げています。太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入比率を最も増やすとする一方で、原発を有力な温室効果ガス無排出電源と位置付け、2030年代から2040年代に電源構成比を増やす可能性があるとしています。次世代の小型原子炉開発にも積極的に投資する方針で、11月2日に、ルーマニアへの導入計画を進めると発表しました。

・産経: ルーマニアが米製小型原子炉導入 中国メーカーとの協定破棄(2021年11月2日)
https://www.sankei.com/article/20211103-E6HSA64MU5IZ7KQDAXPZBSFCQU/

■日本の脱炭素は困難を極める?


温室効果ガス排出量5位の日本は、昨年10月、菅首相(当時)が2050年のカーボンニュートラルを宣言。4月には2030年度における温室効果ガス削減目標を引き上げると発表し、2013年度比で46%削減、さらに50%削減に向けて挑戦を続けるとしました。
トヨタ自動車・豊田章男社長はカーボンニュートラルの実現に向けて革新的な脱炭素技術開発に挑む意欲を示していますが、それを形にしたものの一つが、静岡県裾野市にトヨタが建設中の実験都市「ウーブン・シティ」といえそうです。この都市では水素の利活用でエネルギー自給自足を目指します。

・東京:裾野 トヨタ実証都市「ウーブン・シティ」 水素使いエネルギー自給 カフナー取締役「街づくりに貢献」(2021年10月7日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/135403

日本は環境NGOの国際ネットワーク「気候行動ネットワーク」によって、温暖化対策に後ろ向きな「化石賞」に選ばれていますが、COP26後も政府関係者が水面下で、商社や電力・ガス会社に対して化石燃料からの脱却ペースを落とすことや、石油・ガス関連事業への新規開発投資を奨励していると「Bloomberg」が伝えています。( https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-12-02/R3GVLQDWX2PS01

COP3時代から地球温暖化問題に取り組んできた環境省OBに話を聞いたところ、決して今後も原子力依存を前提に考えていくという必要はないということでした。曰く、「日本は原発がなくても再エネでまかなうことは可能」。ただし、「日本の脱炭素実現に向けて“既存の”原子力発電所の活用は効率的だということも確か」とも。このニュースを書いてあらためて考えたのは、やっぱり一人ひとりができる省エネが基本!ということでした。
2017年8月、55回目となった月1原発映画祭では河合弘之弁護士が監督した『日本と再生 光と風のギガワット作戦』を上映しました。現在YouTubeで無料公開されています。
https://www.youtube.com/watch?v=g8syYn0KTss

原子力市民委員会のオンライン企画「原発ゼロ社会とカーボンニュートラルは両立できる」もぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=iQcXuE0IpJs&t=627s
(文責:阿部)

■一行ニュース

▪朝日新聞:関電元役員ら不起訴、告発者「ありえない」 地元は沈黙(2021/11/9)
https://digital.asahi.com/articles/ASPC96DPPPC9PTIL01H.html

▪朝日新聞:原発避難者の医療費支援、縮小へ 23年度にも 国が自治体と協議(2021/11/10)
https://digital.asahi.com/articles/ASPC97223PC8ULZU00X.html

▪NHK:「MOX燃料」高浜原発に到着 国内への搬入は約4年ぶり 福井(2021/11/17)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211117/k10013351031000.html

▪朝日新聞;島根原発巡る住民投票へ署名活動始まる 米子・境港(2021/11/20)
https://digital.asahi.com/articles/ASPCM6VHNPCMPUUB00Q.html

▪東京新聞:27日から海底トンネル建設に向けた調査へ 処理水海洋放出の準備が本格化 東京電力福島第一原発(2021/11/26)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/144947

・朝日:日立とGE、カナダで小型原子炉を受注 「脱炭素」の利点強調(2021/12/3)https://www.asahi.com/articles/ASPD352KLPD3ULFA01V.html

■次回のニュースレター

次回のトピックは「小型原子炉って何?」の予定です。

■ 月1原発映画の会

問い合わせ先  eigasai2021★jtgt.info ←★を@に置きかえてください。
http://www.jtgt.info/ (地域から未来をつくる・ひがし広場内)

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