2013年12月14日(土) 江戸川市民立発電所見学レポート
江戸川市民立発電所見学レポート
2013年12月14日、江戸川市民立発電所にとりくむNPO法人足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ (通称:足温ネット)さんへ見学に行きました。
1997年、足温ネットは地球温暖化防止を地域で行うことを目指して立ち上がった団体です。江戸川区内に放置されているフロンガスを回収する活動を始めたところ、江戸川区が注目して事業化されることになりました。同年、世界各国が参加した京都での気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3京都会議)に出席、地域で市民ができることがあると訴えてきました。
省エネ
2003年からは省エネによる市民節電所の建設にも取り組んでおられます。省エネは余ったエネルギーを生み出していくという点で発電と同じ。省エネ電化製品を購入しようとする人に融資をしていくという「省エネ家電買い替えサポート事業」をはじめました。実際にエコワット(簡易電力表示器)を使って、年間にどのくらいの電気が使われているのかを測って現状を把握します。融資を受けて買い替えたあと、浮いた電気代を返還してもらうという仕組みです。買い替えによって電気代が約半分になったという結果が出ました。
このように省エネにとりくんでいくと、区内に発電所をつくった分くらいの効果が出ることが分かりました。
もともと生協の活動をしていた人や公務員、地域活動をやっていた人、反原発をやっていた人、自営業、サラリーマンなど、実にさまざまな人々が集まり会員は120人となりました。資金はアーティストからの出資でつくられたap bankという金融NPOから融資を受けて実施しています。これまでの成果をもとに節電ワークショップや学習会を開き足元からの取り組みを提案しています。
市民立発電所
地域で二酸化炭素を減らす別の方法として、二酸化炭素をださないエネルギーを自分たちでつくろうと思い立ったのが市民立発電所です。資金調達から建設や運営まで、すべて市民により行われるという発電所。現在、第一発電所と第二発電所の2つがあります。
1999年7月に完成した第一発電所は太陽光発電による出力5.4kWの発電所。
公共の場所へ設置するということで、区内の寺院へ設置しました。設置費用は590万円。助成金や市民からの寄付、電気代を前払いしてもらうという方法をとり、不足部分はNPOバンクから借り入れました。市民立発電所は江戸川という地域性、多様性を活かすことができます。売電収益をみんなで共有することができ、お金やエネルギーを地域で循環させていくことが可能です。特に第一発電所が設置されたころは固定買い取り制度が無かったため、環境への貢献分を自分たちで評価して、1kWh当たり33円を市民版グリーン電力証書として販売し、参加者には地域通貨を発行しました。これらの点をメガソーラーと比較してみましょう。メガソーラーは自社や株主、投資家のための収益優先で地域に進出してきますが、地域自体そこへ参画することができません。売電収益も地域には入ってくるしくみにはなっていないということもあげられます。実際には太陽光の7割が「メガソーラー」で占められています。
2013年6月「市民発電プロジェクトえど・そら」として、出力11.52kW 240W x 48枚 カナディアンソーラー製の太陽光パネルを江戸川区内高齢者施設の屋上に設置。同じく、出力10.58kW 230W x 46枚 パナソニック製の太陽光パネルを第一発電所のある寺院内に設置。
このうち高年齢者施設の屋上に設置した分が第二発電所となりました。
資金は合計で900万円。この資金を集めるため、当初は企業組合という形を検討していました。しかし企業組合として出資を募った場合には、出資は金融商品とみなされ、金融商品取扱事業者資格が必要となってくることがわかりました。また「出資」というかたちによらず、多くの市民から参加を募るために1口1万円として設定された「疑似私募債」という形をとることにしました。金銭消費貸借契約上は「金利をゼロ」として、元本を10年後に返済します。
利益がでたら?
「金利をゼロとして」お金を出してもらっても、元本を上回る利潤が出たらどうなるのでしょう?
この時は個人のためではなく社会のために使っていこうと考えています。たとえば社会のためにサービスを提供している市民活動を支援することです。
えど・そら事業スキームとしてはこのように考えています。
電気をつくる → 電気を売る → 利益がでる → この利益分を地域振興の団体に出資する (たとえば四国の漁業団体、東北の農業団体) → 出資をした人のところへ季節の品物が利益分入る
出資をした人々のところへ品物が利潤分届くという仕組みをとることができるようにしたいと思います。このようにしていくことができれば、地域でお金・エネルギーの循環が起き、さらに節電にてお金を地域に残していくことができます。地域の活性化へも貢献できます。
東京都内の共同発電 と 海外との連携
地域で市民の手によって発電所をつくっていこうという流れはさまざまなところで起り、日本中いたるところで市民エネルギー、市民発電所が次々と立ち上げられ稼働はじめています。全国の市民電力を集合すると、現在原発2基分くらいに相当するとのこと。
ここでは東京都内の共同発電についてご案内します。(敬称略)
- GQパワー(世田谷区)
- せたがや市民エネルギー
- NPOエコメッセ(世田谷区)
- みたか市民発電
- む~ソーラー(武蔵野市)
- 市民電力小金井
- 調布未来のエネルギー協議会
- 多摩電力合同会社
- 青梅小水力発電プロジェクト
また、インタビューに応じていただいた足温ネット事務局長山崎さんはドイツのシェーナウ村との連携も深めています。これまで2回シェーナウ村を訪れて、市民エネルギーについての問題点を話し合っていらっしゃいます。
全国にたくさん市民エネルギーが立ち上がっても、日本では配送電の問題、とりわけ送電網と配電網の所有権が既成の電力会社であるところから、自然エネルギーを全国に巡らせて行き合うことができません。また日本では電力の自由化がなされていないため、消費者が電力を選ぶということができない状態でいます。
シェーナウ村がこの大きな問題点をクリアしたのには次のような要素があります。
まず、ドイツでは地域における電力供給の責任は自治体にあると憲法に規定されています。映画「シェーナウの想い」のなかでも電力供給契約の期間は20年で、20年ごとに契約を更新するかどうかを自治体が決めるというシーンがでてきます。
次に、地域の配電網を誰が掌握するかという点です。
大手電力会社が地域の配電網を握るのか、シェーナウ市民が作った電力会社が握るのか。安定した電力供給と迅速なメンテナンスがどこまで提供できるか。大手電力会社から配電網を地域の小売業者が借りるということになった場合も託送料がでてくるでしょう。シェーナウ村では配電網を取り戻す住民投票が行われました。
追記
ちょっと前までは市民が電気を起こすということを考えることもなかったと思います。それ以前に「電気」というそのものについてもあるのがあまりにもあたりまえすぎて、焦点となりえなかった感じでした。
ところが、これだけ電気が日常生活を変え、地域を変え、環境を変えていくものであることがわかってくると、同時にそれは自分たちが参加しうるものであるということも実感としてつかめてきます。
まさに「足元から」。そしてエネルギーが市民の時代となりました。自分たちが生活する地域でエネルギーの自給自足の循環が作られていくとしたら、そして全国が結ばれていくとしたら。これが夢ではないところまで来ているように感じます。
2014年は自分のできることからとりくんでいこうと思います。ひがし広場としてもなんらかの形で参画できたらよいなあと考えています。
年末のお忙しい中、見学にご対応いただきました山崎求博事務局長へお礼申し上げるとともに、会のますますのご発展をおいのりいたします。
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