2013年1月5日(土) 第9回「ネコマチッタ物語&げんぱつかるた大会」~月1原発映画祭のご報告~

第9回 「ネコマチッタ物語&げんぱつかるた大会」~月1原発映画祭のご報告~

2013年になって最初の映画祭が、1月5日、いつもの谷中の家で開催されました。今回は昼の部のみ。そのうち、第1部が上映、第2部がかるた大会でした。
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第1部は、30人ほどで短編映画「ネコマチッタ物語」を見ました。
今は平和なネコマチッタで、郵便配達のお手伝いをしている主人公のウォルナット君。手紙を届けるなかで、15年前に町に起こったことを知ります。それは「スーパーニャントリウム発電」と関係がありました。

ネコマチッタで起きた、ちょっとほろ苦くて忘れちゃいけないそんな過去のお話。
「本当の豊かさとは?」「大切なこととは?」勇気と英知で新しい扉を開いた猫達の話。

                            (パンフレットより)

登場するのは、木の猫の人形(ウッドール)たち。とてもかわいい、ユーモアあふれる作品で大人も思わず笑顔になってしまいます。でもそれだけではありません。ネコマチッタ町議会の様子、スーパーニャントリウムによって変わっていく町、そして事件と、猫たちの選んだ道・・・ご覧になった方は今の日本の状況にあてはめずにはいられないと思います。 http://www.nekomacitta.com/(映画HP)

本編20分の上映のあとは、本日のゲスト小嶋伸さんにお話しいただきました。小嶋さんは「ネコマチッタ物語」の原作者でウッドール作家です。
http://www.geocities.jp/kurikobokojima/index.html (小嶋さん主催クリ工房HP)
スクリーンの下に並べた猫たちの人形の横でお話してくださいました。
以下小嶋さんのお話です。

・20年ほど前から原子力発電に対する疑問は感じていました。2011年2月の個展開催時に2作目の映画を作る話が出て(1作目は短編映画「ALIVE」)心暖まるストーリーを考えていたところへ、大震災が発生。原発事故の影響が日増しに大きくなる中、考えていたストーリーを今の形に書き換えました。ところが製作関係者が大手広告代理店とつながりがあったため、変更されたストーリーの内容に難色を示し、一時期は製作自体が不可能かと思う事もありました。しかし「作るならこの話でなければ・・」と説得を重ね、なんとか製作に入ることができました。

・人形の動きは1秒に30コマ、パラパラ漫画のように1コマずつ撮影します。完成までに1年3か月ほどかかりました。
・僕の原作では、最後の場面で元町長をたたえるようになっていましたが、脚本家から「元町長を安易にヒーローにして終わりにしないほうがよい」とアドバイスが出て今の形にしました。これでよかったと思っています。
スーパーニャントリウムができて町が「経済優先」になっていく様子が、時間の関係で短くなり、少しわかりにくくなっているかもしれません。

・12年9月に福島県飯館村や南相馬市小高地区に行きました。諸沢利彦監督の撮影する映画「ROADSIDE#2012」にウォルナット君を出演させるためでした。被災地に入る前、道路わきには黄金色の田んぼが広がっていました。自分も夏に初めて米づくりに挑戦したこともあり、日本人は米さえ作れれば大丈夫なんじゃないか、と思いました。しかし避難地域に入った途端景色は一変。その過酷な現実に対して、自分の作ってきた映画の軽さを強く感じてしまいました。
でもいつか続編を作りたい。今日は皆さんが同じ方向を向いて映画を見ている様子を横から見て、とてもうれしかったです。

お話のあと、映画のメーキング映像を見ました。ひとつひとつ人形や町の風景を作っていく様子を見ると、この映画から伝わる温かさのわけがわかります。

そのあとは会場の皆さんから感想や質問をつのりました。
参加者:居眠りしている猫議員もいる議会の様子には笑ってしまいました。
小嶋さん:本当の市議会の様子を見てあのようにしました。(一同爆笑)
参加者:原発賛否について「論理を使っての議論」に行き詰まりを感じています。小嶋さんは猫による架空の発電という比喩的表現を使われたわけですが、そのメリットはありましたか?
小嶋さん:あるテレビ局でこの映画のことを取り上げてもらえそうだったのが、直前にキャンセルになりました。原子力発電でなく、スーパーニャントリウム発電なのに。比喩を使ってもだめ、というのが今の日本の(特にテレビ局の)状況ですね。

その他、最後の「星まつりの場面」を見て、冬の夜のイルミネーションの問題を考えたというご意見もありました。ネコマチッタの猫たちが見るような美しい星空を、私達も見てみたいですね。

小嶋さんは2011年7月に、地元で「丹沢未来プロジェクト」を立ち上げられました。
https://sites.google.com/site/tanzawamirai/

一緒に考えよう。
毎日使うエネルギーのこと 食べ物のこと 健康のこと 安心・安全のこと
子どもたち 孫たち その先の子どもたちへ、どんな未来をつないでいきたいのか・・・・・
丹沢・未来プロジェクトは、「未来のためになにかできること」を考え、行動するプロジェクトチームです。        (丹沢未来プロジェクトHPより)

そして今まで2回の「丹沢ミラプロ映画祭」を地区の様々な会場で開催されました。私たち「ひがし広場」の活動とも共通するところが大きいと感じました。
小嶋さん、今回はありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

なお、小嶋さん主催クリ工房の展示会は以下の予定で開催されます。今回の映画を見て興味を持たれた方はぜひお出かけください。(詳細は各会場のHPなどでご確認をお願いします)
1/16(水)〜1/22(火)・・・浜松遠鉄百貨店7Fアートサロン「小嶋 伸・サチコの猫展」
2/20(水)〜2/26(火)・・・新宿高島屋10F暮らしの工芸
4/18(木)〜29(日)・・・谷中・ギャラリー猫町/猫町の猫々11(月・火・水は休み)
5/14(火)〜19(日)・・・丹沢美術館

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第2部は、10分ほどの休憩をはさんで3時過ぎから始まりました。(休憩の間も、部屋の模様替え、小嶋さんや古知屋さん(後出)の作品を見たり購入する方々で、谷中の家は移動するのもちょっと大変な状態になりました)

第2部は初めての試みの「かるた大会」です。25名ほどの方が参加されました。
実は、この「げんぱつかるた」を作られた木版画家の古知屋(こちや)恵子さんもゲストにお呼びしていたのですが、お子さんが体調を崩されていらっしゃれなくなってしまいました。古知屋さんご自身、大変残念に思われていたとのこと。またいつか谷中の家にお呼びしたいと思います。

そこで古知屋さんのご紹介は、古知屋さんが高校生のときからのお知り合いという、参加者・是恒朋子さんにお願いしました。是恒さんは何回も月1映画祭に参加してくださり、「げんぱつかるた」をスタッフに紹介してくださった方です。
以下是恒さんのお話です。

25年前出版社に勤めており、『ふざけるな!校則』という本に関わりました。19才の著者が書いた本でしたが、その本にたくさんの高校生からの反響がありました。当時高校生だった古知屋さんも手紙を送ってくれたひとりでした。集まったみんなの声は『ふざけるな!校則パート2』という本になりました。古知屋さんはその後美大に進んで油絵を専攻し、創作の道に進まれました。今日はそのパート2の本に載っている「高校生の時の古知屋さんの手紙」を読むことで、彼女のひととなりを紹介します。

ということで、是恒さんのお嬢さん(現役大学生)が、その文章を朗読してくれました。そこには、管理教育のもと、自分の頭で考えることなしに「勉強させられている」「かいならされた」高校生の実態に疑問を感じ、みんなはどう思っているの?と問いかける古知屋さんがいました。参加者の皆さんは、じっとその朗読に聞き入っていました。

古知屋さんが「げんぱつかるた」を作ったきっかけについては、当日お配りした資料から以下要約します。

一番多くテーマにしているのが「戦争」です。日常でも気楽に戦争を話題に、と「戦争かるた」を2003年につくりました。その後もっと身近に感じてもらう為「戦争かるた・日本」をつくりました。今回の「原発かるた」はかるた3作目になります。
震災後友人から送られた『まだ、まにあうのなら』http://www.jiyusha.co.jp/mokrok/books/z1987.htmlを読み、自分のできることをしなければ、と原発かるたをつくりはじめたのです。

古知屋さんのご紹介が終わったところで、かるた大会の始まりです。板の間に1組、土間に2組、合わせてかるた3組分の絵札が広がっています。読み手はひとり。札を取ったなかで一番早かった方に、自己紹介やコメントを1分以内でしていただきながら進めました。
「るすのいえ あれからときが とまってる」
「もーいやだ いなわらたべて ひばくした」
第1部にいらした子どもさんたちが帰られてしまったので、大人ばかりの参加でしたが、皆さん大いにもりあがっていました。ひとことコメントとしては、
・かるたがすばらしいですね
・猫が好きな人は反原発のことが多いです
・2月に「犬と猫と人間と2 動物たちの大震災」という映画があります
・選挙結果にがっくりしましたが、今年は仲間を増やして活動していきたい
・月1映画祭に触発され、私も自分の通う大学で12月に映画会を開催しました。やってみたら結構反響が良くてびっくりしました。でも今は普通に選挙や原発について話すことがなかなか出来ない空気があります。そういったことを普通に深く語りあえるような場を作りたいと思っています。
・「ふざけるな!校則」の古知屋さんの文章を聞いて、自分の高校生時代を思い出していろいろ考えました
・美味しいお酒が飲みたくて酒米を作っています
などなど。

終盤戦は、コメントなしでかるたに集中しました。結果、14枚取ったおふたりが優勝されましたが、賞品はひとつしかなかったため、じゃんけんで決めていただくことに。練馬区のTさんがみごと、賞品の「げんぱつかるた」を手にされました。

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楽しいかるた大会の途中から、谷中の家には美味しそうな匂いがただよっていました。かるたのあとは、恒例のカフェ。今日のメニューは具がたっぷり、熱々のミネストローネとフランスパンです。
乾杯のワインは、参加者・田島さんからの差し入れ「2012 CHRISTMAS & NEWYEAR WINE」でした。(詳しくは後述の情報コーナーに載せます)
かるた大会での交流と温かいスープのせいか、いつにもまして、わいわいとにぎやかなカフェタイムとなりました。途中、参加者の方からの差し入れ「宮崎県のお菓子・あくまき」もいただきました。

カフェの間に皆さんからいただいた情報をまとめてご紹介します。
☆乾杯時のワインは「CLC被災地支援デスク」と「きらきら星ネット」の共同企画です。
「ピア名古屋」という障がいを持った仲間たちが働く施設のオリジナルワインで、収益はすべて、福島の子どもたちを支援する複数のボランティア団体が2013年度に実施する《保養交流プログラム》のために使われます。
赤・白ともに750mlで、1本2000円を目安にご寄付をお願いしています。
申込み・お問い合わせは、「CLC被災地支援デスク」電話0467-25-1616(9時~17時)FAX0467-25-1617までお願いします。
CLC(クリスチャンライフコミュニティ)被災地支援デスクのHP http://l-mission.com/clcshiendesk/
きらきら星ネットのHP http://kirakira.jejp.net/

☆その「きらきら星ネット」では、《三人寄れば脱原発の知恵》と題した例会を行っていくことにしました。例会の特徴は
①専門家の話を聞くのではなく、インターネットを活用して自分たちで政策を考える
②福島からの避難者の方など、当事者の訴えに耳を傾ける
③毎回テーマを絞り、自分たちなりの結論を持ち帰る
④原発事故被害者支援・廃炉への道筋・低線量被爆健康被害や食物の安全・自然エネルギーの4分野に渡って考える
⑤脱原発に反対の立場に耳を傾け、それを克服する具体策を一緒に考える
などです。
第1回は2月2日(土)13:30~16:00 ニコラバレ105号室(四谷駅麹町口1分)
テーマ:日本の原発維持により利益を得て、脱原発により損害を被る国内外の様々なグループがある。どのようなグループが原発の維持廃止にどれだけの利害をもっているか?その損害を誰がどのように負担することが公正だろうか?
今後の例会の予定(5/11・7/6・10/5・14年1/8)
問い合わせは田島さん jtajima2002★ybb.ne.jp まで ←★を@に読み替えてください。

☆記録DVD『「原発」都民投票~これまで と これから~』がまもなく発売されます。このDVD は、ごく普通の市民が原発事故を目の当たりにして、原発・エネルギー問題について自らの意思表示をする道として「住民投票」を求めて活動し、都議会での否決にも挫折せず、新たな団体『「原発」都民投票の会』を設立するに至る道のりを記録したものです。
http://tomintohyo.web.fc2.com/download/dvd_apply.pdf

☆その「原発」都民投票の会では、「常設型住民投票条例の制定」を求める署名を集めています。住民投票は特定の課題について市民の意志を明らかにするために必要であり、既に多くの自治体では常設型住民投票条例が設置され、充分な情報提供や住民と議会との討議の場が設けられて住民投票が行われています。
私たちの生活にとって重要な政策課題について都民の意志が反映されるよう、常設型都民投票条例の制定を求めます。署名目標数 9 万筆 。1 月28 日まで追加署名を行い、目標数になることをめざします。ご協力お願いします。http://tomintohyo.info/wp-content/uploads/7f0d9626382e874d5bda347d28244e56.pdf
 
☆鳳 舞衣子 浪曲の会のお知らせ ~下町ゆかりの浪曲を木造民家で聴きます~
1月26日(土)17:30~ 谷中の家にて 入場料500円(ケーキ付)
プログラム17:30「団十郎と亀甲縞」
     18:00 解説とティーブレイク&ケーキ
     18:30「稲川次郎吉」
     19:30 ワイン&鍋とトーク(500円+カンパ)
問い合わせ・申込み 090-9492-0075(先着30名)

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皆さん、たくさんの貴重な情報ありがとうございました。
終了予定の5時を過ぎたので今回の映画祭もお開きとなりましたが、小嶋さんのDVDや絵葉書、古知屋さんのかるた・カレンダー・絵葉書を購入する方々で、会場はいつまでもにぎやかでした。
なお、小嶋さんのDVDを購入されたい方はhttp://www.nekomacitta.com/から。
古知屋さんのげんぱつかるたを購入されたい方は genpatsukaruta★yahoo.co.jp(←★を@に読み替えてください) までお問い合わせください。

今回のアンケートから、参加者の方の感想を少しご紹介します。
・すごくいい映画だったと思いました。また観たいです。(小3)。
・ニャントリウム発電所が夕日に染まったところを観て私も受け入れる勇気がほしいと改めて思いました。とても真っ当な話で、難しい分からないこととして子どもには語られることの無い原発ですが、子どもに見てもらいたいと思いました。
・(げんぱつかるたは)よく考え抜かれた言葉でした。
・(交流カフェでは)気持ちよくすごさせていただきありがとうございました。

次回第10回は、2月2日(土)青森県から加藤鉄監督をお迎えして、
昼の部13:30~「フクシマからの風」 夜の部17:30~「田神有楽」を見ます。
どうぞご参加ください。
次回以降予定:3月2日上映作品検討中(震災から2年を迎え、福島関連の企画を予定)
      4月6日舩橋監督をお迎えして「フタバから遠く離れて」再上映
2013年も月1原発映画祭をどうぞよろしくお願いいたします。

なお、今回のカフェで皆様からいただいたカンパは21,150円になりました。このうちカフェ経費をのぞいた12,650円をゲストの小嶋さんと古知屋さんの創作活動への寄付とさせていただきました。ありがとうございました。

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