10月6日(土) 原発のない未来を実感する 〜月1映画祭のご報告〜

原発のない未来を実感する~月1原発映画祭レポート

第6回目となり、月1原発映画祭はやっとなんとか第1コーナーを回ったというところでしょうか。
10月は6日(土)の開催でした。会場はいつもの谷中の家です。
今回のテーマは、「原発のない社会を実感する」。
7月7日、七夕の夜、第3回「シェーナウの想い」上映の時にゲストとして来てくれたのが環境建築家の彦根アンドレアさん。そのときの出会いがきっかけで、アンドレアさん主催のシェーナウなど南ドイツ新エネルギー視察ツアーに映画会参加者が加わり、その報告会もかねての映画祭となりました。
先回に引き続き、今回も昼と夜の2部構成です。

昼の部は2時からはじまりました。
映画は「シェーナウの想い」アンコール上映です。
今回から着脱式木製天井吊り下げ型の映写台が付きました。谷中の家設計者の武山さんと施工者の勝部さんが工夫してつくってくれました。そのため、フロアが目いっぱい使え、小上がりの段差と椅子の高低差を利用してまるでミニシアターのよう。100インチのスクリーンで見る「シェーナウの想い」は、また格別です。

〈映画「シェーナウの想い」〉
ドイツ南西部、人口2000人の小さなまち、シェーナウ。住民グループが2度の住民投票を勝ち取って原発に一切頼らない電力会社をつくっていくドキュメンタリー。僅差で住民投票を勝っていく様子は、はらはらどきどき。勝利のシーンでは、もらい泣きしている人もいました。シビアな運動の中にあっても、手づくりのジャムや大きなハート型のクッキーを配って投票を呼びかけたり、ビールを汲み交わすおいしそうなシーンがあったり、美しい村と生活を大切にしているんだということが伝わってきます。でもアンドレアさんによれば、一瞬たりとも電気を止めることはできないという重圧と責任のもと、シェーナウの市民電力会社は、日々運営されているのだそうです。

昼の部の参加者は20人ほど。プラス2歳児が2人。女の子のほうは、板の間ですやすや眠っていたほどで、2人ともくつろいでいてくれたようです。

〈昼の部・交流カフェ〉

3時からはカフェ+おやつタイム。ここで出た声の一部を紹介します。
* 25歳。政治には関心のない世代。シェーナウの肩の力の抜けた持続可能な運動の仕方が良かった。
* 0歳のこどもがいる。東京にいても不安がある。でも福島のほうがもっとたいへんと考えると、気持ちは揺れる。でも、ここにいる生活を楽しもうという気持ちに切り替え、もっと自分で確認できたらと思う。
* 80歳。中学生の孫に、あの人は死ぬまで放射能測定をしていたと記憶されたらいいなと思っている。
* 浪江町出身の大学院生。自宅は、3.11のあの日のまま。帰れない。一人でうつうつとするより、仲間をつくりたい。
* 原発事故の直後、こどもと南に避難した。小学校の給食の放射能測定は実現させた。新たな目標を模索中。なんとかして東電の姿勢を改めさせたい。
* 原発というが、原子力と発電は別物。原子力で発電をすることが誤り。小さな技術を寄せ集めた社会をつくっていきたい。
* 大学の同級生が福島にいるが、周りとの関係で避難できない。東京にいる私に何ができるか。
* 警備員をしている。原発事故現場の近くで警備の仕事をした。原発反対には反対の立場。今日の映画はすごいなと思った。代替のものをすすめて行けば、原発はなくなると思った。
* 大学紛争の渦中にいた団塊世代。穏やかなユーモアを持ったシェーナウの運動の仕方に学ばせてもらった。

2歳児から80歳まで、幅広い世代による茶話会でした。世代や立場を超えて不安や本音を語り合える場が必要と感じます。もっとそれができていけるよう、努力したいですし、いいアイデアがありましたら、お知らせください。

☆☆☆☆☆☆☆

夜の部の上映は5時半から。
30人ほどの方が参加してくれました。
発表者の彦根アンドレアさんと田島正城さんも到着し、まずは、ビデオ上映。
「未来への決断~ノーモア原発」からPart3「エネルギーの未来を創る挑戦」(日本電波ニュース社/17分)。短いものですが、ドイツの報告を聞く前に日本の脱原発自然エネルギーの現状と取り組み事例を知ろうという意図です。
ここでちょっとアクシデント。間違って未来への決断~ノーモア原発のPart1の冒頭部分を写してしまったのです。でも、これが呼び水となって、未来への決断を全編見たいという声もありました。いずれの日にかのお楽しみにしましょう。

〈DVD「未来への決断」~ノーモア原発のPart3エネルギーの未来を創る挑戦〉
さて、「エネルギーの未来を創る挑戦」では、新潟県巻町(現新潟市に編入)での住民投票など、参考になる事例がコンパクトに紹介されていました。
巻町では、1995年、原発建設の是非を問う住民投票が、当時の町長によって拒否されても、住民は自主管理の住民投票を実施。投票率45%、建設反対9854票、建設賛成474票となり、96年には、全国初の条例にもとづく住民投票を実施し、原発建設を阻止しました。このほか原発建設が中止された地域は、石川県珠洲市、福井県小浜市、京都府久美浜町、兵庫県御津市、三重県紀勢町、和歌山県日置川町、岡山県日生町、山口県豊北町、徳島県海南町など多数あります。
岩手県葛巻町では、風力発電と林業を生かし、木チップによる暖房と発電を行ってエネルギー自給率160パーセントだとか。
富山県魚津市では、1口50万円の市民ファンドによる小水力発電をしています。
環境省によれば、日本の再生可能エネルギーのポテンシャルは、現在の日本のエネルギー供給能力の10倍以上あり、北海道釧路市のコールマイン釧路という炭田の埋蔵量は、20億トン。自然エネルギー開発へのつなぎとしては、原発より現実的です。
それに何より、原発事故後、福島県議会は、全会一致で県内の原発の廃炉を求める請願を採択しているのです。

〈ドイツ視察報告「新エネルギーと環境建築」〉
ビデオ上映の後は、いよいよドイツ視察報告です。視察ツアーに参加した田島正城さん作のパワーポイントによる説明に、アンドレアさんが突っ込みを入れていきます。田島さんは、中高の社会科、政治経済の先生。ジェスチャーたっぷりの分かりやすい熱血授業でした。
今年9月4日から12日まで訪問した主なところは以下の4つ。
・ シェーナウ電力会社
・ フライブルク市ヴォーバン地区
・ 農村マウエンハイム
・ コンスタンツ市
田島さんによれば、再生可能エネルギー生活は、我慢でなく快適!高価ではなくリーズナブル!巨大最先端技術ではなくあるもので工夫!だそうです。
そして理想の生活のためには発想の転換が必要で、それは、3つの「閉じ込め」だというのです。3つの閉じ込めとは、
・ 熱を逃がさず閉じ込める
・ コンパクトシティで長距離の移動なし
・ 地域外へお金の流出をなくし、地域内でお金を回す
シェーナウの市民電力会社は、ドイツ4大電力会社を拒否し、安全と雇用創出を生んでいます。
マウエンハイム村では、牛糞で発電。フライブルク市ヴォーバン地区は、トラムの走るコンパクトシティ。コンスタンツ市では、都市施設局が率先してパッシブハウスを普及させています。
シンプルな技術の工夫という意味では、マウエンハイム村のバイオガス発電装置もそうですが、コジェネ発電など、バイクのモーターを使っているのです。地中熱交換器も今ある技術を使って冷房と除湿ができるそうです。
こんな生活を可能にした社会のしくみや根本的な考え方は何なのか。田島さんは考えます。それは5つ。
1. 自分たちで決め、実行する自治。
2. 反新自由主義。生活に必要なものを経済原則にゆだねるのは危険。
3. 大企業の搾取から自由に。うそを見抜き抵抗する。
4. 農業、林業なども含めたものづくりのマイスター精神。
5. 価値観の選択に対する確信、「澄んだ目」

〈夜の部・交流カフェ〉
夜の部には、建築の専門家、都市計画の専門家、化学エンジニアなど、プロフェッショナルな面々も参加しており、もうこれからが、議論沸騰。8時近くになっていったん休憩を取り、交流カフェに切り替え。
今回は、白ワインで乾杯。カフェスタッフ特製の4種のカナッペ、オリーブプチトマトつき、ガーリックトーストがメニュー。お茶はコロンミント+ペパーミントの2種混合ミントティー。お酒のお替りは、林業再生に取り組む「トビムシ」の村上達也さんからの新潟県柏崎市のお酒、「越の誉」純米吟醸の差し入れでした。感謝!
9時になっていったん締めと思ったのですが、折悪しく雨が降ってきて、雨宿りがてら、議論続行。10時に終了となりました。時間コントロールについては、次回への反省といたします。
なお、長時間とあってお酒も進み、白ワイン3リットル、日本酒1・8リットル、お茶6リットルを飲んでしまいました(身に覚えのある方は、次回から、手厚いカンパをよろしく)。

質疑応答と交流カフェで出た質問や意見の一部を列挙します。
* ドイツにはBMWなど大工場があるが、自然エネルギーでまかなえるのだろうか。天然ガスや石油、石炭はCO2を出すし。シュトゥットガルトなど大都市では自然エネルギーは難しいのではないか。
* ドイツは、フランスから電気を買っているから脱原発ができるのではないか。またドイツは生産電力が消費電力を上回って他国に売電をしているというが本当か。国内の電力は、ブロックで流通しているのだろうか。
* ドイツは、2022年末で、すなわちあと10年で原発停止を決めた。目標を設定すれば企業や商売人は、それに合わせるもの。もっとポジティブにエンカレッジすべき。
* GEは原発から撤退した。不利と分かれば、企業は、別の事業に方向転換するものだ。
* 毎日30キロを自転車で通勤している。コンパクトシティに共感。自転車が通りやすいまちをつくりたい。
* 1960年代末頃から建築家は、アーバンデザインとして車を入れないまちを提案してきた。それができなかったのは、政治と制度のためだ。
* 高崎では、白衣観音像の首のあたりを高圧電線が横切っている。低アンペアの小型水力発電やもっと小さい風力発電で、5万人くらいのまちからエネルギー自己完結型のまちに変えていきたい。
* 北海道の別海町の風力発電は、現在動いていない。石油、ガス業界は、風力発電に対して抵抗している。
* 小さい枠でエネルギーをつくるのでは、産業に対して責任を持てない。自然エネルギーの電圧の不安定さに対しては、スマートグリッドの技術が必要だ。
* アメリカのアーミッシュは、簡単なディーゼルで必要最小限の電気をつくって生活している。
* 国は省エネルギーを国民に訴えてきたが、動かないので、2018年までにすべての建築物で省エネ法にもとづく省エネルギー基準を義務化する。その代わり、基準より10パーセント省エネすれば、低炭素建築物に認定され、特典が受けられるようになる。これについては、11月7日までパブリックコメントを募集している。
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=15805
  
* 蓄電するのは意味がない。太陽光で電気をつくるのは売るのが目的でなく、自分の生活を支えるためのはず。ドイツのように太陽光発電をサポートしすぎると、それをやめた時に後が続かない。ドイツの自然エネルギー事業は、ボランティアや慈善でやっているのではない。ビジネス、仕事として成り立っている。
* 自家発電には、自分でつくったものを自分で使う楽しさがあると思う。
* 「シェーナウの想い」にあったように少数派キャンペーンが必要。中学生から日本を変えていくという意味で教育が大事だと思う。
* 自分は天皇陛下万歳で育った化学エンジニア。原発のウランは、どこでどうつくられているか、セシウムすべてが有害でなく、セシウム137が危険だということが教育の場で教えられていない。
* 都立高校のホームルームで原発をテーマに取り上げた先生がいる。
* 私立高校の教師だが、高2の政治経済で1年間原子力関係で授業を行った。この問題から日本が分かる。センター入試対策は、補習で。
* 40年間、私立中高の社会科の教師をしていた。教科書は使わず、レポートと論文(原稿用紙30枚)で。生徒がそのような授業をいいと言えば、親は納得する。親と教師が協力して教師を育てることが大事。
* 脱原発、自然エネルギーと言っても、なかなか社会では通用しない。ただ、政治的には右派から左派まで原発反対と原発推進が混在している。

最後に20歳の大学生から「現状では」とか「難しい」とかいうのはやめませんか、という発言がありました。彼は一緒にこの会に来た小中学校時代の友達と女子学生2名の4人で自然エネルギー関連の会社を立ち上げようとしています。議論が長くなると、私たちは、できない理由やしない理由を求めがちです。普通逆なのに、最年少から「せっかくこうやって集まっているのだから、今できることからしましょう」と励まされて、はっとしました。またこの2人、来てくれるといいですね。

もうすぐ10時です。少し小止みになりましたが、まだ雨は降っています。
最後にインフォメーションを2つ。
1. 東京電力の原発再稼動の是非を問う都民投票実現をめざしてきたグループが、都民の日の10月1日(月)、「原発」都民投票の会としてスタートしました。
2. 次回11月の月1原発映画祭は、
11月24日(土)
舩橋淳監督「フタバから遠く離れて」上映
12月は
12月1日(土)
映画「みえない雲」を題材にしたお話
☆11月は、第1土曜日から変更、会場も変わりますのでご注意ください。

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