月1原発映画祭/交流カフェについて

☆月1原発映画祭/交流カフェについて☆

「月1原発映画祭」では、原発に関連した映画・映像を上映し、併せて交流会を開催、監督や制作者などのゲストを迎えてお話を聞いたり、意見交換・情報交換をしたり、日ごろの思いや疑問を語り合ったりする交流の場を提供しています。原発に関することを知りたい、考えたい、話したいという方、いろいろな考えの方が気軽に参加できる会をめざしています。

会場はおもにコミュニティスペース「谷中の家」(台東区谷中3-17-11)ですが、コロナ禍をきっかけにオンラインとのハイブリッド開催も行っています。現在は3ヵ月に1回ほどの開催ですが、スタートした頃の「月1」の名まえは変えずに残しています。

この会を始めるきっかけとなったのは、「原発都民投票」の実現をめざした活動(2011~2012年)でした。東京電力福島第1原発事故のあと、自分たちが使う電気を原発に頼るのかどうか、ひとりひとりが考えて意思表明できる場をつくりたいと願う人たちが輪を広げ、都内各所の自分の住んでいる地域での法定署名活動をおこないました。原発都民投票条例案を都議会にかけるために最低22万筆あまりの署名が必要でしたが、2か月で32万を超える都民の署名が集まり、2012年6月の都議会で審議されました。結果は否決、原発都民投票は実現されませんでしたが、この活動を通じてできた地域でのつながりを生かし、引きつづき情報交換をしていこうということから「地域から未来をつくる・ひがし広場(略称・ひがし広場)」のネットワークができ、原発について継続して語り合っていく場として、2012年5月に「月1原発映画祭/交流カフェ」が生まれました。現在、有志10名あまりでつくる「月1原発映画の会」で運営しています。

月1原発映画祭

2022年1月29日(日) オンライン月1原発映画祭/交流会 『かくれキニシタン~声をあげる10年目の福島~』+関久雄監督トーク+交流会


第76回 オンライン月1原発映画祭/交流会
『かくれキニシタン~声をあげる10年目の福島~』+関久雄監督トーク+交流会


チラシ

●日時:1月29日(日)15時よりzoom &「谷中の家」にて開催

・15:00〜16:10 映画『かくれキニシタン』上映
・16:10〜16:40 関久雄監督トーク(監督はZOOMにて参加されます)
・16:40〜17:30 交流会(質疑応答やフリートーク)

●参加費:1000円

(お申込み&お支払いはPeatix から。文末の申込み方法をご覧ください)

●zoom30名・谷中の家10名(どちらも申込制)

●申し込み期限:zoom 1月29日(日)15時・谷中の家 1月28日(土)21時

12月に予定していた上映会を延期しての開催です。
佐渡で「保養キャンプ」を続けていらっしゃる関久雄さんが自ら監督された映画を上映し、お話をうかがいます。保養に参加された方々の生の声、そこから見えてくる福島の今、声をあげることの大切さ、ユニークなタイトルにこめられた意味とは・・・。事故などなかったかのような原発政策が打ち出されている今、関さんの言葉をお聞きして考えたいと思います。
皆さんからの参加費は、必要経費以外関さんの保養活動にカンパいたします。
なお今回はオンラインでの参加が難しい方のために、定員10名ではありますが従来の「谷中の家」にての参加も受け付けます。たくさんの方のご参加お待ちしています。

*今回は、当日zoomでご一緒に映画を鑑賞してからトークとなります。事前に各自で映画を観ていただく形式ではありません。参加費は、映画とトーク込みで1000円となります。

●『かくれキニシタン~声をあげる10年目の福島~』作品紹介

(関久雄 映画「かくれキニシタン」のできるまで より抜粋)
2020年の夏、私たちは米沢と佐渡で保養をやった。コロナも保養も、基本は免疫力をあげることだから止める理由はない。同時に尋常でないこの状況を記録にしておこうと映画作りを始めた。保養の様子や参加者へのインタビューなどを撮る中で、福島の中に生じている対立や分断が見えてきた・・・

2021年製作/作品時間71分
監督 : 関久雄
製作 : 特定非営利法人ライフケア
撮影 : 佐藤広一 今野寿美雄 大野沙亜也
編集 : 大野沙亜也
音楽 : 関久雄 大谷哲範 だるま森+えりこ
イメージ画像 : 総合工作芸術家だるま森
予告編 https://www.youtube.com/watch?v=Ff4e7z-dMiY&t=1s

*「保養」とは、放射線量の低い所で過ごし、体から放射性物質を排泄し、心身ともに元気になっていく活動です。チェルノブイリ原発事故のあったウクライナやベラルーシでは36年たった今も国の事業として保養に行くことができますが、日本は民間の善意に頼るしかない現状です。

●関久雄監督プロフィール

岩手県生まれ。1970年、高校卒業後、横浜で昼は港で働き夜は神奈川大学に通い学生運動や労働運動を体験するも、理論とヘルメットで武装して相手を叩くやり方についていけず、1977年ヒマラヤニストに転向。1983年のヒマラヤでの転落事故がきっかけで帰国後、無農薬野菜の八百屋を始める。1986年のチェルノブイリ原発事故をきっかけに脱原発と非暴力運動に関わる。1994年、福島県の二本松に移住。塾経営、社協ボランティアコーディネーター、施設職員などを勤め、2011年の震災、原発事故以後はNPO法人の職員として原発を止める活動を再開。2012年からは佐渡ヶ島に保養センター「へっついの家」を立ち上げ保養を中心の活動を担う。また、自宅の土を東電と国に届ける「灰の行進」を行ったり、詩作やスタディツアーを通して「福島のいま」を伝え続けている。現在、妻と子どもは米沢に避難中。

●申し込み方法

①zoomにてオンライン参加の方
下記PeatixのURLをクリックして「チケットを申し込む」をクリックしてください。
https://peatix.com/event/3448027
指示に従ってお支払い方法などを選択してください。手続き完了後、ご登録のメールアドレス宛にチケットのお申込詳細メールが自動配信されます。

②「谷中の家」での参加を希望される方
メール eigasai2022★jtgt.info(★を@に置きかえてください)または、
Tel 090-9492-0075(西川)までお申込みください。(人数に限りがありますのでお早めに!)参加費1000円は当日会場でお支払いください。

●会場:谷中の家(東京都台東区谷中3-17-11)

メトロ千代田線千駄木・JR日暮里・JR西日暮里下車徒歩7分。
よみせ通り、延命地蔵の向かいの路地を入る、2筋目を右折。
角から二軒目。目印は格子戸。

■主催:月1原発映画の会

問い合わせ先:eigasai2022★jtgt.info ←★を@に置きかえてください。
https://www.jtgt.info/ (地域から未来をつくる・ひがし広場内)

2022年9月25日(日) 第75回 オンライン月1原発映画祭/交流会 『太陽が落ちた日』+アヤ・ドメーニグ監督トーク+交流会

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第75回 オンライン月1原発映画祭/交流会
『太陽が落ちた日』+アヤ・ドメーニグ監督トーク+交流会
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●日時:9月25日(日)16:00よりzoomにて開催

・16:00〜16:40 アヤ・ドメーニグ監督トーク
・16:40〜17:30 交流会(質疑応答やフリートーク)

●参加費:500円(お申込み&お支払いはPeatix から。文末の申込み方法をご覧ください)

●定員:30名(申込制)

●申し込み期限:9月24日(土)16時

今回は、広島にルーツを持ち、スイス在住、アヤ・ドメーニグ監督の『太陽が落ちた日』を見て語り合いたいと思います。家族の歴史を丁寧にたどり、あの日の広島を体験した人々をたずねるうちに、福島の事故が起こります。登場人物それぞれの生きた時間と心に残る言葉。時に温かいユーモアも感じさせ、しかし深い余韻を残す美しい映画です。
映画は各自ご都合の良い日時に鑑賞していただき、オンラインでトーク&交流会を行います。ご参加お待ちしています。

●映画の視聴方法

以下のアジアンドキュメンタリーズのサイトから視聴料495円を支払ってご覧ください。申込から1週間、何度でも視聴可能です。
https://asiandocs.co.jp/con/227?from_category_id=
初めてアジアンドキュメンタリーズをご利用になる方は、ページ右上の「新規登録」をクリックして指示に従って登録ください。
(交流会に参加できなくても、映画だけをご覧いただくことももちろん可能です)

●『太陽が落ちた日』作品紹介(アジアンドキュメンタリーズより)

広島赤十字病院の若き内科医だった監督の祖父は、原爆投下のその日から被爆者の治療にあたっていた。しかし彼は、生涯を通じて決して自らの体験を語る事はなかった。しかし監督が彼の足跡を辿っていくうち、同じような体験をした看護師と医師にめぐり会う。監督は彼らと出会い、取材を重ねながら、少しずつ祖父に近づいていく。そして、2011年3月11日、福島の原発事故によって、監督の探索の旅は新たな局面を迎えることになる。
2015年製作/作品時間78分
監督:アヤ・ドメーニグ
予告編 https://www.youtube.com/watch?v=Wn52yRSN4dQ&t=6s

●アヤ・ドメーニグ監督プロフィール

1972年日本で生まれ、スイスで育つ。1992年から2000年までチューリッヒ大学で文化人類学、映画学、日本学を学び映像人類学を専門分野としドキュメンタリー『親方』で修士号収得。2001年から2005年までチューリッヒ芸術大学(ZHdK)映像学科で学ぶ。卒業作品『春いちばん』(フィクション、22分)は、ロカルノ、クレモンフェランなど、数々の国際映画祭で上映され、フランスのアンジェ映画祭ではシネシネマ賞を受賞。2015 年長編ドキュメンタリー『太陽が落ちた日』は第68回ロカルノ国際映画祭でワールドプレミア (「批評家週間」部門)。スイスフィルム賞2016において最優秀ドキュメンタリー、最優秀音楽の二つの部門でノミネートされ、スイスフィルム最優秀音楽賞を受賞。
2021年、東京オリンピックに反対する日本のアーティストを描いたテレビドキュメンタリー(「サイレント・フクシマ」)を撮影。
公式HP(英語)
https://www.ayadomenig.ch/

*ドメーニグ監督への質問や映画の感想など、ぜひ交流会でご発言ください。
4歳でスイスに移られた監督は、日本語では複雑な表現ができないかもしれないと、今までは通訳を介したトークをされていましたが、今回は日本語での参加にトライしてくださいます。

●トーク&交流会の申し込み方法

下記PeatixのURLをクリックして「チケットを申し込む」をクリックしてください。
https://peatix.com/event/3345340/view
指示に従ってお支払い方法などを選択してください。手続き完了後、ご登録のメールアドレス宛にチケットのお申込詳細メールが自動配信されます。

■主催:月1原発映画の会

問い合わせ先:eigasai2022★jtgt.info ←★を@に置きかえてください。
https://www.jtgt.info/  (地域から未来をつくる・ひがし広場内)

2022年5月15日(日) 第74回 オンライン月1原発映画祭/交流カフェ 『ミツバチの羽音と地球の回転』 + 鎌仲ひとみ監督トーク + 交流カフェ


第74回 オンライン月1原発映画祭/交流カフェ
『ミツバチの羽音と地球の回転』 + 鎌仲ひとみ監督トーク + 交流カフェ


●プログラム

5月15日(日)15:00〜16:30(zoomによるオンライン開催)
・15:00〜15:40 鎌仲ひとみ監督トーク
・15:40〜16:30 交流カフェ(質疑応答やフリートーク)

映画は各自ご自宅で、前日14日(土)14:00〜当日15日(日)14:00のあいだにご覧ください。この間、何度でも視聴可能です。
(お申込みされた方に、視聴URLをお送りします)

●『ミツバチの羽音と地球の回転』作品紹介

瀬戸内海祝島では自給自足的な暮らしが営まれ、漁師やおばちゃんたちがきれいな海を守りたいと28年間も原発建設に反対してきた。 しかし、圧倒的な経済力と権力が原発建設を推進し続けている。一方、北欧のスウェーデンでは脱石油・脱原発建設を決め、着実にエネルギーを自給エネルギーへとシフトし、持続可能な社会作りが進んでいる。持続可能な社会と暮らしとは。私たちの今はどこへむかうのか。旅するカメラの記録。
監督 鎌仲ひとみ 
製作・配給 グループ現代
音楽 Shing02
プロデューサー 小泉修吉 
撮影 岩田まき子、秋葉清功
録音 河崎宏一、服部卓爾
助監督 豊里洋、南田美紅、齋藤愛
編集 辻井潔
2010年/カラー/デジタル/135分
監督公式HP「ぶんぶんフィルムズ」内 作品情報(予告編あり)
http://kamanaka.com/works/works-movie/works-theater/11/

●鎌仲ひとみ監督プロフィール

早稲田大学卒業と同時にドキュメンタリー映画制作の現場へ。文化庁の助成を受けてカナダ国立映画制作所で研修後、ニューヨークでメディア・アクティビスト活動。1995年の帰国後はNHKで医療、経済、環境をテーマに番組を多数制作。主な監督作品に、2003年『ヒバクシャ—世界の終わりに』、2006年『六ヶ所村ラプソディー』、2010年『ミツバチの羽音と地球の回転』、
2012年『内部被ばくを生き抜く』、2015年『小さき声のカノン—選択する人々』、2013年〜2015年『カノンだよりVol.1〜4』。2019年『インディペンデント・リビング』は初のプロデュース作品。著書に「原発のその先へ−ミツバチ革命が始まる」、「六ヶ所村ラプソディー ドキュメンタリー現在進行形」、共著に「鎌仲監督VS福島大学一年生」、「今こそ、エネルギーシフト」、「内部被曝の脅威」など。多摩美術大学非常勤講師。
公式サイト http://kamanaka.com/

●申し込み方法

こちらのPeatixのURLをクリックして「チケットを申し込む」をクリックしてください。
https://peatix.com/event/3227141/view
指示に従ってお支払い方法などを選択してください。手続き完了後、ご登録のメールアドレス宛にチケットのお申込詳細メールが自動配信されます。

●参加費 1000円(映画視聴・トーク・交流カフェ)

定員 30名
申し込み期限 5月14日(土)14時

■主催:月1原発映画の会

問い合わせ先 eigasai2022★jtgt.info ←★を@に置きかえてください。
https://www.jtgt.info/ (地域から未来をつくる・ひがし広場内)

第73回 オンライン月1原発映画祭/交流カフェ 『原発夫婦』 + 柴原洋一さんトーク

2020年3月に予定した上映会を新型コロナ感染拡大のため中止して早2年。このたび、コロナ禍が続いている状況に対応して、オンラインにて第73回を開催することにしました。映画は各自ご都合の良い日時に鑑賞いただき、トークと交流会はオンラインで集まりたいと思います。ご参加お待ちしています。


第73回 オンライン月1原発映画祭/交流カフェ『原発夫婦』 + 柴原洋一さんトーク


●『原発夫婦』作品紹介


1963年(昭和38年)三重県の南に位置する南伊勢町と大紀町にまたがる芦浜に突如、原発建設計画が持ち上がる。1963年〜2000年までの37年間にもおよぶ苦闘の末、芦浜原発計画は白紙撤回となった。この作品は、その長く辛い闘争を生き抜いた漁師夫婦の記録である。
監督:内谷正文
出演 :小倉正巳 小倉紀子
柴原洋一/大石琢照/大野裕子/中村和人/野村五輪夫
荒木章代/加藤茜/河野みずほ/福田ゆふな/カミシバラーミキナカムラ
(2020年/ 78分/日本)
公式HP https://genpatsu-fufu.info/introduction
参考:月1原発映画祭ニュースレター第3号「三重県芦浜原発阻止20年…原発の断りかた」
http://www.jtgt.info/?q=node/3053

●柴原洋一さん紹介

1958年三重県浜島町(現志摩市)生まれ。県立高校教師だった1990年代に「南島町芦浜原発阻止闘争本部」が組織した全県組織「脱原発みえネットワーク」の事務局長を務めた。現在「原発おことわり三重の会」会員。伊勢市在住。著書に『原発の断りかた ぼくの芦浜闘争記』(月兎舎/2020年)
柴原さんは、『原発夫婦』制作の協力者であり出演もされているということで、今回交流カフェにゲストとしてお呼びしました。

●Vimeoによる映画鑑賞は、各自ご都合の良い時に以下のURLからレンタル料500円を払ってご鑑賞ください。

https://vimeo.com/ondemand/genpatsufufu
Vimeoの利用が初めての方は、ページ右上、緑色の「登録」をクリックして、氏名・メールアドレス・パスワードを登録してください。

*柴原さんへの質問や映画の感想など、ぜひ交流カフェでご発言ください。
トーク/交流カフェに参加されなくても、映画だけを見ていただくことももちろん可能です。

●zoomによるトーク/交流カフェ(定員30名)

2022年3月6日(日)15:00~16:30
15:00~15:40 柴原洋一さんトーク
15:40~16:30 交流カフェ(柴原さんと質疑応答など)
参加費:無料 *事前申込みが必要です(3月5日17時まで)

申し込み方法:以下いずれかの方法で必ず申し込んでください。

1.申込みフォーム「こくちーずプロ」

https://www.kokuchpro.com/event/ea7fdbdb89b90409ba548faccd2f4050/
お名前とメールアドレスを登録してください。
申込み完了のメールが届きますのでご確認ください。

2.メール

eigasai2022★jtgt.info ←★を@に置きかえてください。
件名を「月1原発映画祭申込み」として、お名前とメールアドレスを明記してください。

*申し込まれた方には事前に、交流カフェのzoomアドレスをお送りします。

zoomを初めてご利用の方は以下をお読みください。特にスマホやタブレットで参加される場合は、事前にzoomアプリのダウンロードが必要です。
http://group-nexus.jp/nexus/wp-content/uploads/2019/05/manual_zoom_20190...

■主催:月1原発映画の会

問い合わせ先 eigasai2022★jtgt.info ←★を@に置きかえてください。
https://www.jtgt.info/ (地域から未来をつくる・ひがし広場内)

月1原発映画祭ニュースレター第16号

「月1原発映画の会」スタッフの小林です。
月1原発映画祭ニュースレター第16号をお届けします。

■ 今月のトピック「小型モジュール炉って何?」

気候変動対策のひとつとして、「新型炉」「第4世代炉」などと呼ばれる次世代原子炉に期待する声があります。現世代にも次世代にも原子力は要りませんが、どんなものなのか知っておきたいと思いました。
新型炉と呼ばれるものには「小型モジュール炉」「高速炉」「高温ガス炉」「溶融塩炉」「超臨界圧水冷却炉」「進行波炉」など、いろいろとあるようです。前回のニュースレターの中に「日立とGEが小型モジュール炉をカナダの電力会社から受注」「アメリカがルーマニアに小型モジュール炉を導入する計画」などのニュースがあったので、今回は特にこの「小型モジュール炉」について調べてみました。

◆ 小型モジュール炉(SMR=Small Modular Reactor)の特徴は・・・

・出力が小さい。(30万kW以下。現在の主流炉は100万kW超)
・「モジュール建築」のように、規格化された部材一式を工場で生産し、現地で組み立てる。プレハブ住宅のイメージ。

◆ 推進派が主張する利点と、それに対するまっとうな反論

(1)発電時にCO2を出さないクリーンなエネルギーで、しかも小型。

反論:小型とはいっても核反応を起こす原子力発電。発電時にCO2を出さなくても「日常的な放射能汚染」「核のゴミを生産し続ける」「事故の危険性」のデメリットを帳消しにはできない。そもそも商用展開できる炉は完成していないので、温暖化対策にも間に合わない。

(2)大型炉より冷却が早い。しかも、原子炉全体をプールに沈めておけるので、メルトダウンを起こしにくい。よって従来炉より安全。防災計画エリアも縮小できる。

反論:放射性物質を扱う限り、安全は保障されない。軽水炉(従来炉)とは違う形の事故の可能性があり、その対策も一朝一夕にはできない。原子炉が小さくなったからといって、テロや事故からの防御の必要性はなくならない。

(3)部材が規格化され工場で組み立てて現地へ運ぶため、品質管理がしやすく工事期間も短くて済む。コストが削減でき、大量生産もできて、経済性が向上。

反論:大型炉1基の代わりに小型炉数基を製造するなら、経済性は発揮できない。下がり続ける再エネのコストと競争はできない。複数設置するには立地自治体との調整も複雑になる。大量生産は、故障と改良を繰り返す原子力には向かない。テロや事故へのセキュリティコストが減るわけではない。

(4)電力需要が小さい地域や電力グリッドの未発達な地域(途上国等)への普及が可能となる。発電が終わったら撤去が容易なので、核兵器への転用を防ぐことができ、核不拡散に効果的。

反論:世界各地に設置されることになれば、それだけ放射性物質の管理が難しくなり、核兵器に転用される可能性も高まる。原発でなく、それぞれの地域に合った再エネ施設を作れば良い。

◆ 「新型炉」というけれど、実は新しくない?

小型モジュール炉にかかわらず、小型炉は実は1950年代から存在しています。
世界初の原子力発電所は、1954年にロシア(ソ連)で稼働した0.5万kWの小型炉。それ以来、原子力潜水艦や人口衛星のエネルギー源として、何百もの小型原子炉が作られてきました。現在革新的なものとして宣伝されている技術のほとんどは、すでに数十年前に考えられたものだそうです。今までに50以上の異なるデザインの小型炉が設計、開発されたようですが、建設されたのはわずか。そのほとんどは現在、一般の原子炉と同じく老朽化しているそうです。

◆ では誰が、何のために、小型モジュール炉を進めようとしているのでしょうか?

自然エネルギー財団のコラムで見つけた答えを要約すると・・・
・各国政府は小型モジュール炉を推進することで、気候対策をしているように見せかけて、その実、対策を先延ばしにできる。
・小型モジュール炉は、運転可能な形態ではまだ存在しないため、本当の問題に直面することもない。
公益法人自然エネルギー財団「小型モジュール式原子炉は、たいていが悪策だ」
https://www.renewable-ei.org/activities/column/REupdate/20210528.php

*以上、簡単ですがまとめてみました。説明の足りない部分があると思いますので、どうぞ以下の動画(原子力市民委員会と、原子力資料情報室)もご覧ください。
「新型」とはいっても危険な放射性物質を扱い、廃棄物を生み出してしまう原子力発電。小型炉などの新規開発に期待をもたせることは、再エネなど他の安全な技術への投資を妨げることになります。気候変動対策として他の国では原子力回帰の動きもありますが、福島の事故を経験した日本は、原子力をこれ以上使わないという決断をするべきではないでしょうか。(文責:小林)

(参考にした動画と資料)
・原子力市民委員会「原発ゼロ社会への道」第8回「新型原子炉」に未来はあるのか?
http://www.ccnejapan.com/?p=12286 (60分)
・原子力資料情報室 連続ウェブ講座2021第5回「新型炉問題-高速炉を中心に」
https://www.youtube.com/watch?v=z45jGKFR1Ow (60分)

・EnergyShift 「世界で注目を集めている小型原子炉は、本当に脱炭素の選択肢になるのか」
https://energy-shift.com/news/693065ca-965a-4f55-9fc3-550cf5f85cd1
・資源エネルギー庁「原子力にいま起こっているイノベーション(前編)~次世代の原子炉はどんな姿?」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/smr_01.html

■ インフォメーション


2021年12月18日、台湾の貢寮(コンリャオ)にある第4原発建設の再開を問う国民投票があり、反対多数で否決されました。日立、東芝が輸出した原子炉です。40年間、反対運動を続けてきた台湾(貢寮)市民とともに喜びたいと思います。
このニュースは、日本ではほとんど話題にされませんでした。同時に4つの議題が投票にかけられていて「アメリカからの成長促進剤入り豚肉の輸入」についてだけが主に報道されていました。

・フォーカス台湾:国民投票4件全て不成立 成長促進剤入り豚肉、輸入継続へ(2021/12/18)
https://japan.focustaiwan.tw/politics/202112180007

・ノーニュークス・アジアフォーラムジャパン:4,262,451票もの強力な反原発票をありがとう、第四原発を終結させ、核のない社会へ(2021/12/27)
http://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2534

月1原発映画祭では2013年に2回、映画『こんにちは貢寮』を上映しました。第4原発と反対運動については、ゲストトークでの報告に詳しいです。興味のある方はどうぞお読みください。
第16回報告 http://www.jtgt.info/?q=node/380
第19回報告 http://www.jtgt.info/?q=node/397

■ 一行ニュース

・北海道新聞:「核抜き条例案」蘭越町も可決(2021/12/17)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/624015/

・東京新聞:ナトリウム77トン抜き取れず もんじゅ、新機器開発必要(2021/12/23 )
https://www.tokyo-np.co.jp/article/150695

・日本経済新聞:柏崎刈羽原発7号機でも溶接不備 1000カ所以上で再施工(2021/12/24)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC2496C0U1A221C2000000/

・赤旗:独 原発3基31日停止 全廃政策新政権も継続 22年残る3基も停止、廃炉へ(2021/12/29)
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik21/2021-12-29/2021122906_01_0.html

・東京新聞:処理水タンク「23年春に満杯」は苦しい主張? 後ずれの試算でも海洋放出へ突き進む東電(2021/12/30)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/151666

・日本経済新聞:米国の高速炉計画に日本参加へ 原子力機構など協力(2022/1/1)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA010PX0R00C22A1000000/

・朝日新聞:原発は「低炭素への移行を加速」 欧州委が位置づけ方針発表(2022/1/2)
https://digital.asahi.com/articles/ASQ120HHTQ11UHBI00B.html

・朝日新聞:市民ら「金品受領、儀礼の範囲外」関電元役員不起訴で検審申し立て(2022/1/7)
https://digital.asahi.com/articles/ASQ175JR7Q17PTIL01J.html?iref=pc_phot...

■来月の予定

来月は、オンライン上映会&トークを企画中です。

■ 月1原発映画の会

問い合わせ先  eigasai2022★jtgt.info ←★を@に置きかえてください。
http://www.jtgt.info/ (地域から未来をつくる・ひがし広場内)

月1原発映画祭ニュースレター第15号

「月1原発映画の会」スタッフの阿部です。
月1原発映画祭ニュースレター第15号をお届けします。

■今月のトピック「気候変動と原発」


11月18日、英国グラスゴーで開かれていたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が終了しました。大気中の温室効果ガス濃度を安定させることを目的にしたこの締約国会議には、11月現在197カ国・地域が参加しています。
温室効果ガスによる地球への悪影響は深刻で、2015年の「パリ協定」(COP 21で採択)では、「世界の気温上昇を産業革命前と比べて2度より十分低く保ち、1.5度に抑える」ことを努力目標としていましたが、今回採択された「グラスゴー気候合意」では、一歩進んで1.5度が明確な目標になりました。石炭火力発電の段階的削減も明記されています。

・日経: COP26の成果文書「グラスゴー気候合意」要旨(2021年11月15日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA150WS0V11C21A1000000/

COP26期間中、温室効果ガス排出量世界1、2位の中国と米国は、メタンの排出削減での協力や、2025年に10年後の排出削減目標を国連に提出することなどを盛り込んだ共同宣言を発表。また排出量世界3位のインドは、2030年に再生可能エネルギーの比率を50%にし、2070年までに排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)にすると表明しました。
あらためて世界の脱炭素に向けての動きを見てみました。まずはヨーロッパです。

■ ヨーロッパでは原発復帰


▶︎【イギリス】ジョンソン首相は2035年には、化石燃料に頼らず風力発電や原発などで全電力をまかなう計画を掲げました。すでにイギリスの電源構成では、1990年に70%を超えていた石炭は2%未満。地形の利を活用して世界一の洋上風力発電大国となっていて、風力や太陽光などの再生可能エネルギーが4割に達しています。再エネとともに原発も脱炭素化の中核電源として位置づけており、次世代の小型原子炉の実用化に取り組むとしています。
参考 イギリスの電源構成(2020年/( )内は1990年)
①ガス35.7%(0.1%) ②風力と太陽光28.4% ③原子力16.1%(19.8%) ④その他の再エネ12.6% ⑤石油など3.3%(6.5%) ⑥水力2.2%(1.8%)⑦石炭1.8%(71.9%)

・47NEWS: COP26開催、議長国イギリスの野望(2021年11月6日)
https://nordot.app/828935864833589248


▶︎【フランス】マクロン大統領は11月9日に国内での原子力発電所の建設を再開すると発表し、原発建設が気候変動対策になると強調しました。ヨーロッパではフランスを中心に原発を推進する動きが復活しています。
EUは近く「持続可能な経済活動」のリストを策定しますが、脱炭素に資する産業への投資を促進するのが狙いで、指定された業界は公的補助を受けやすくなります。フランスやポーランドなどは、原発をこのリストに含めることを求めています。

・日経: フランス、原発建設再開へ マクロン氏「脱炭素へ必要」(2021年11月10日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR100IQ0Q1A111C2000000/

・日経: フランス先頭に原発へ回帰するEU(The Economist)(2021年11月2日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB310JX0R31C21A0000000/


▶︎【ドイツ】福島第1原発の事故を受け、メルケル首相(当時)が2022年末までに全ての原発を停止する方針を定めました。ショルツ新首相が率いる新政権は、環境重視のグリーン経済へ移行するため気候変動対策として以下の計画を掲げています。2030年までに石炭火力を段階的に廃止し、電力の80%を再生可能エネルギーでまかなう、新しい商業施設の屋根に太陽光パネルの設置を義務付ける、16の州で面積の2%で風力発電を活用し、水素エネルギーにも注力する、約1,500万台の電気自動車の導入を目指すなどです。
しかし一方で、エネルギー価格の高騰を理由に市民の半数が、2022年末の原発廃止に反対しているというアンケート結果もあります。

・朝日: 気候変動対策8年前倒し ドイツ新政権、3党寄り添い世界をリードへ(2021年11月26日)
https://www.asahi.com/articles/ASPCT6Q7TPCTUHBI00B.html

・BBC: ドイツ3党が連立で合意、ショルツ新政権が12月発足へ メルケル政権に幕(2021年11月25日)
https://www.bbc.com/japanese/59411875

■米国も脱炭素化に向けて原発を活用


バイデン大統領によって、米国は地球温暖化対策の世界的枠組み「パリ協定」に復帰しました。2050年に温室効果ガス排出実質ゼロ実現を目指す米国は、2035年までの脱炭素化を掲げています。太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入比率を最も増やすとする一方で、原発を有力な温室効果ガス無排出電源と位置付け、2030年代から2040年代に電源構成比を増やす可能性があるとしています。次世代の小型原子炉開発にも積極的に投資する方針で、11月2日に、ルーマニアへの導入計画を進めると発表しました。

・産経: ルーマニアが米製小型原子炉導入 中国メーカーとの協定破棄(2021年11月2日)
https://www.sankei.com/article/20211103-E6HSA64MU5IZ7KQDAXPZBSFCQU/

■日本の脱炭素は困難を極める?


温室効果ガス排出量5位の日本は、昨年10月、菅首相(当時)が2050年のカーボンニュートラルを宣言。4月には2030年度における温室効果ガス削減目標を引き上げると発表し、2013年度比で46%削減、さらに50%削減に向けて挑戦を続けるとしました。
トヨタ自動車・豊田章男社長はカーボンニュートラルの実現に向けて革新的な脱炭素技術開発に挑む意欲を示していますが、それを形にしたものの一つが、静岡県裾野市にトヨタが建設中の実験都市「ウーブン・シティ」といえそうです。この都市では水素の利活用でエネルギー自給自足を目指します。

・東京:裾野 トヨタ実証都市「ウーブン・シティ」 水素使いエネルギー自給 カフナー取締役「街づくりに貢献」(2021年10月7日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/135403

日本は環境NGOの国際ネットワーク「気候行動ネットワーク」によって、温暖化対策に後ろ向きな「化石賞」に選ばれていますが、COP26後も政府関係者が水面下で、商社や電力・ガス会社に対して化石燃料からの脱却ペースを落とすことや、石油・ガス関連事業への新規開発投資を奨励していると「Bloomberg」が伝えています。( https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-12-02/R3GVLQDWX2PS01

COP3時代から地球温暖化問題に取り組んできた環境省OBに話を聞いたところ、決して今後も原子力依存を前提に考えていくという必要はないということでした。曰く、「日本は原発がなくても再エネでまかなうことは可能」。ただし、「日本の脱炭素実現に向けて“既存の”原子力発電所の活用は効率的だということも確か」とも。このニュースを書いてあらためて考えたのは、やっぱり一人ひとりができる省エネが基本!ということでした。
2017年8月、55回目となった月1原発映画祭では河合弘之弁護士が監督した『日本と再生 光と風のギガワット作戦』を上映しました。現在YouTubeで無料公開されています。
https://www.youtube.com/watch?v=g8syYn0KTss

原子力市民委員会のオンライン企画「原発ゼロ社会とカーボンニュートラルは両立できる」もぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=iQcXuE0IpJs&t=627s
(文責:阿部)

■一行ニュース

▪朝日新聞:関電元役員ら不起訴、告発者「ありえない」 地元は沈黙(2021/11/9)
https://digital.asahi.com/articles/ASPC96DPPPC9PTIL01H.html

▪朝日新聞:原発避難者の医療費支援、縮小へ 23年度にも 国が自治体と協議(2021/11/10)
https://digital.asahi.com/articles/ASPC97223PC8ULZU00X.html

▪NHK:「MOX燃料」高浜原発に到着 国内への搬入は約4年ぶり 福井(2021/11/17)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211117/k10013351031000.html

▪朝日新聞;島根原発巡る住民投票へ署名活動始まる 米子・境港(2021/11/20)
https://digital.asahi.com/articles/ASPCM6VHNPCMPUUB00Q.html

▪東京新聞:27日から海底トンネル建設に向けた調査へ 処理水海洋放出の準備が本格化 東京電力福島第一原発(2021/11/26)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/144947

・朝日:日立とGE、カナダで小型原子炉を受注 「脱炭素」の利点強調(2021/12/3)https://www.asahi.com/articles/ASPD352KLPD3ULFA01V.html

■次回のニュースレター

次回のトピックは「小型原子炉って何?」の予定です。

■ 月1原発映画の会

問い合わせ先  eigasai2021★jtgt.info ←★を@に置きかえてください。
http://www.jtgt.info/ (地域から未来をつくる・ひがし広場内)

月1原発映画祭ニュースレター第14号

「月1原発映画の会」スタッフの小林です。
月1原発映画祭ニュースレター第14号をお届けします。

■今月のトピック「本で読む、原発問題」

今月は、スタッフそれぞれがお薦めする本をご紹介します。「原発問題」とひとくくりにしましたが、そこにはさまざまな側面があり、もちろん関連書籍も多数あります。一市民である私たちスタッフが、自分の言葉でお薦め本をご紹介します。

◆『私が原発を止めた理由』 樋口英明著/旬報社/ 2021年/税込定価1430円


この書籍は、福井地裁の大飯原発運転差し止め訴訟で、運転差し止めの判決を下した際の裁判長であった樋口英明氏が、なぜ原発を止めなければならないのかについて、法曹界の難解な言葉を用いることなく解説したものです。この書籍の要旨も、訴訟の判決も、ほぼ次のような流れになっています。

第1 原発事故のもたらす被害は極めて甚大。
第2 それゆえに原発には高度の安全性が求められる。
第3 地震大国日本において原発に高度の安全性があるということは、原発に高度の耐震性があるということにほかならない
第4 我が国の原発の耐震性は極めて低い。
第5 よって、原発の安全性は許されない。

原発の耐震性については、次のように極めて脆弱であることが指摘されています。

・多くの原発が建設された当時、震度7は400ガルの重力加速度と考えられており、700ガルが原発の耐震基準とされていた
・その後の阪神淡路地震を契機として観測網の整備が進み、震度7は1500ガル相当であり400ガルは震度5の耐震基準にすぎないことが判明
・原発の耐震性は住宅の耐震性よりも劣る規準である

全国の原発が、本来ならば運転を諦めなければならない状況にあります。

訴訟を担当した裁判官が後にその内容について書籍にするというのは異例だそうですが、「無知は罪、無口はもっと罪」という言葉を引用し樋口氏はこの本を書いた理由について、原発の危険性について知ったのにそれを告げないのはさらに重い罪になると語ります。読者の方にも、自ら考えて自分ができることを実行していただきたいと結んでいます。本書の司法の目からみた原発の危険性に関する分析は見事という他はありません。ご一読をお勧めします。(T.K)

旬報社 https://www.junposha.com/book/b561325.html

◆『孤塁 双葉郡消防士たちの3・11』吉田千亜著/岩波書店/2020年/定価1980円
『ふくしま原発作業員日誌 イチエフの真実、9年間の記録』片山夏子/朝日新聞出版/2020年/税込定価1870円


事故から10年目の3月に続けて読みました。『孤塁』は事故発生から1週間が日を追って、『作業員日誌』はその後の9年間が年ごとに描かれていて、私にとっては2冊がつながっているように思えました。
『孤塁』では、緊迫し混乱した当時の様子と、使命感を持つ消防士の方々の不眠不休の活動を知り、通常の救助ができない原子力災害のおそろしさを改めて感じました。他の原発でも事故があれば避難や救助がどれだけ困難になるか、ということも考えさせられました。
『作業員日誌』では、重装備の過酷な作業と、作業員の身分の不安定さを改めて知り、原発事故の後始末にきちんとお金をかけることができない国の姿勢を思いました。汚染水問題も最初からずっと続いてきたことに改めて気づかされました。
どちらの本も、現場の声を丁寧に集めて時系列に編まれていて、9年間を振り返ることができます。そして今も放射能の危険のなかで働く人がいることを忘れてはいけないと思いました。(A.K)

岩波書店 https://www.iwanami.co.jp/book/b492586.html
朝日新聞出版 https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=21730

*福島原発刑事訴訟支援団のオンラインセミナー第4回(2021/10/20)で、著者の吉田千亜さんが『孤塁』について語った動画をこちらから見られます。
https://shien-dan.org/online-seminar-202108/

◆『なぜメルケルは「転向」したのか ドイツ原子力四〇年戦争の真実』熊谷徹著/日経BP社/2012年/税込定価1760円


ドイツのメルケル首相が政界を去るのに合わせて、この本を読み返してみました。副題にあるように、ドイツの原子力政策と反原子力運動の歴史がつづられています。確かにメルケル首相はすみやかに脱原発を決めましたが、熊谷氏は「緑の党が1998年に政権参加に成功した瞬間に、この国の原発廃止への道筋はすでに確定していたと私は思う」と述べています。私がこの本を読み返していたのは、ちょうど衆院選とその結果が出た頃だったので、政党や社会運動も紆余曲折を経ながらも時間をかけて形作られていくもので、短い期間での答えを求めて一喜一憂し過ぎる必要はないのだと思えました。
熊谷氏は最後にこう述べています。「福島で爆発したのは原子炉だけではない。(中略)人間と安全よりも成長と経済効率を優先した社会も爆発したのだ」 事故を起こした日本がなぜ脱原発できないのか、もう一度考えるきっかけを与えてくれる本だと思います。(A.K)

日経BP https://www.nikkeibp.co.jp/atclpubmkt/book/12/P48900/

◆『聞き書き 小泉金吾 われ一粒の籾なれど』加藤鉄 編著/東風舎出版/2007年/税込定価2500円(DVD『田神有楽』付)


核燃料サイクル基地として巨大開発が進められてきた青森県六ヶ所村で、開発用地の区域にただ1軒残り、米を作り森や神社を守りながら暮らし続けた小泉金吾さん(2010年に82歳で逝去)の人生が聞き書きで綴られた貴重な記録です。
六ヶ所村が石油コンビナートを中心とした「むつ小川原開発計画」の頓挫から核燃施設誘致計画に巻き込まれていくなかで、お金と権力にものをいわせて「辺境・過疎地」に犠牲を強いる社会構造に対して一歩も引かなかった小泉金吾さんのありようが、地の言葉でほとばしるように語られます。そのような人物がいかにして形成されていったのか? それはむしろ、本書の前半に語られる下北半島の厳しい風土、戦前・戦中・戦後という時代背景と、自身のおいたちや仕事の遍歴、日々の暮らしからじわじわと伝わってきます。
編著者の加藤鉄さんは映画監督。1995年に六ヶ所村に入り、⾼レベル放射性廃棄物がフランスから初めて搬⼊されて以来の3年半の出来事と共に、小泉金吾さんに密着してドキュメンタリー映画『田神有楽』(2002年)を完成させました。そのまま隣村に移住してしまった加藤監督が章ごとに添えた文章も心に残り、私には忘れがたい1冊になっています。(A.U)

*入手方法:下記へ葉書か電話かFAXで注文。(要送料)
自然食の店「まるめろ」
青森県弘前市川先3-13-20 TEL・FAX 0172-26-3469

*月1原発映画祭では2013年に加藤鉄監督を迎えて「田神有楽」と「フクシマからの風」(同監督、2011年)を上映しました。
レポート http://www.jtgt.info/?q=node/258

◆『いないことにされる私たち 福島第一原発事故10年目の「言ってはいけない真実」』青木美希 著/朝日新聞出版/2021年/税込定価1650円


「だって、福島(の原発事故)では一人も死んでいないでしょ。」2022年3月号は、福島特集にしようと話していたときのわが社、60代男性の言葉だ。私はこの言葉にずっと引っかかっていた。なぜ、そんな言葉が出るのか、なぜ、私はそれに違和感を覚えるのか、この本は教えてくれる。
 第1章では、原発事故の被害者が、いったい何人なのかさえ、はっきりしていない事実が明らかになる。政府発表の現在の原発事故避難者は、4万人。だが、帰還者の数からすれば、7万人以上が戻れていない。避難者=被害者が一体どれだけなのかを把握し、被害の大きさを認めることが第一歩ではないか。
 第2章は自殺者の多さ。被害を自殺者で計るなんてことは本当はしたくない。でも住宅支援が打ち切られた直後、中3男子が自殺し、その父親も心身に変調をきたす。筆者はその姿を追う。
 この本を読んでいる最中に、日本建築家協会の傘下である「災害復興支援機構」の70代男性から電話があった。「われわれはまちや建物を建設することで復興だとしてきたが、福島の被災者の心の復興が必要ではないか。アドバイスがほしい。」私は言った。「福島原発事故は企業による最悪の公害汚染。災害ではなく、被害。復興ではなく、補償だ。」原発事故を東日本大震災の被災と一緒くたにし、あたかも天災のようにとらえてこなかったか。「復興」が原発事故被害者の心を苦しめる。福島では「復興」も「災害」も使わずに話をしよう。(N.N)

朝日新聞出版 https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=22862

◆『原発プロパガンダ』本間龍著/岩波書店/2016年/税込定価902円


本間龍氏は長らく博報堂に勤めており、その広告業界での内情や知見を元に原発に関するプロパガンダが長年に渡りいかに繰り広げられてきたかを、膨大な量の調査を元に解説しています。

本書ではメディアの生命線ともいえる広告枠を、電気料金から捻出した巨額の広告費で長年に渡り買いあさり、広告媒体のメディアが原発に対しての批判番組の放映、批判記事の掲載をさせない圧力をかけていた事実が明らかにされています。

たとえば、1976年に当時テレビ東京に勤めていた田原総一朗氏は原発設置を巡る電力会社と広告代理店の癒着を描いた「原子力戦争」という書籍を刊行します。こちらは雑誌「展望」の連載が元になっていましたが、連載開始後にすぐに電通から圧力が加わり、連載を中止するか会社を辞めるかという選択を迫られたそうです。結局、田原総一朗氏はテレビ東京を辞めて連載を続けたそうです。あるいは、電力会社がTVのニュース番組のスポンサーになることで、ニュースでは原発に都合の悪いニュースを報道させなくするといった取り組みが行われていました。

このように原発プロパガンダは単に広告を目にした人に対する原発の安全・クリーンといったイメージ作りだけでなく、報道統制の役割も担っていました。取り組みがいかに巧妙で戦略的であったかが上記のような実例を元に語られています。

本書は2016年刊行で、311後の原発プロパガンダの再開についても触れています。広告代理店が考え出したスローガンは次の通りです。

・原発は日本のベースロード電源
・火力発電は二酸化炭素を排出するので、環境に優しくない
・原発停止による割高な原油の輸入は国富の流出

まさに今の政府の原発に対する説明と瓜二つです。これが原発推進派の手の内ならば、広告代理店の影響の及ばないホームページやSNS等のメディアを通じてこれらに対して一つずつ反論を重ねていくのが脱原発の市民運動や政治活動として効果的ではないかと感じました。原発推進派の手の内を知るにはもってこいの一冊です。(T.K)

岩波書店 https://www.iwanami.co.jp/book/b226386.html

■超ショートコラム「自分の言葉で伝えよう」

皆さんがお薦めしたい本も教えてください。放射能、チェルノブイリや福島の事故、反対運動、エネルギー問題・・・。今回スタッフが紹介した本の感想も歓迎です。
→200字以内、名前/ペンネーム、住んでいる地名などは投稿された方の任意とします。
投稿の原稿はメールでeigasai2021★jtgt.info宛てにお送りください。←★を@に置きかえてください。

■インフォメーション

▪訃報です。飯舘村の元酪農家、長谷川健一さんが、10月22日甲状腺がんのため68歳でお亡くなりになりました。被害者団体の共同代表などとして活動され、数々の映像作品にも出演され、発言されていました。ご冥福をお祈りし、長谷川さんが伝えてくださったことに思いをはせたいと思います。長谷川さんが出演され、月1原発映画祭でも上映した『遺言 原発さえなければ』シリーズの公式サイトはこちら。 https://www.yuigon-fukushima.com/

▪「原爆の図展」文京シビックセンター1階 展示室2  2021年11月11日(木)〜14日(日)
主催:「原爆の図」を見る会・文京

丸木美術館から2点の絵画と、映像上映、展示などを、都内で見られるこの機会にぜひ。
http://www.jtgt.info/?q=node/3470

▪原発いらない金曜行動、官邸前で毎月第3金曜日に続いています。次回は11月26日。
https://bit.ly/3oeAW9K

■1行ニュース

▪PRESIDENT Online: 脱原発で一部から絶賛されたドイツが「国中大停電の危機」を迎えている笑えない理由 (2021/10/11)
https://president.jp/articles/-/50717

▪東京新聞:脱炭素へ再生エネ倍増 第6次エネ基本計画を閣議決定 原発の新増設は盛り込まず(2021/10/22)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/138374

▪環境ビジネスオンライン:「冬の電力、需給厳しい」エネルギー業界全体で対応を 官民連絡会議(2021/10/22)
https://www.kankyo-business.jp/news/029867.php

▪読売新聞:美浜原発3号機、再稼働から4か月で運転停止…冬場に電力逼迫の懸念も
(2021/10/23)
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20211023-OYT1T50131/

▪NHK選挙WEB:寿都町長選 現職の片岡春雄氏が6選 「文献調査」継続の見通し(2021/10/26更新)
https://www.nhk.or.jp/senkyo2/sapporo/17837/skh50591.html

▪NHK:柏崎刈羽原発 本格的な検査開始 テロ対策上の重大な不備相次ぎ(2021/10/26)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211026/k10013321881000.html

▪共同通信:軽石漂着、原発に注意喚起 海底火山噴火で規制委員(2021/10/27)
https://news.yahoo.co.jp/articles/b3b5adf23d2b465237e17eb63e80e4289d1db908

▪NHK:福島第一原発 裁判官が初めて敷地内を視察 東電株主代表訴訟(2021/10/29)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211029/k10013327661000.html?utm_int=n...

■次回のニュースレター

次回のトピックは「気候変動と原発推進について考える」の予定です。

■ 月1原発映画の会

問い合わせ先  eigasai2021★jtgt.info ←★を@に置きかえてください。
http://www.jtgt.info/ (地域から未来をつくる・ひがし広場内)

月1原発映画祭ニュースレター第13号

「月1原発映画の会」スタッフの阿部です。
月1原発映画祭ニュースレター第13号をお届けします。

■今月のトピック「世界の原発ってどうなっている?」

ニュースレター第7号で「映画でみるチェルノブイリ」として私たちスタッフが選んだ映画を紹介しました。そのときベラルーシの原発建設について知り、そういえば世界の原発はどんな状況にあるんだろう?との疑問がわいたのが、今回のニュースレターのきっかけになりました。

◆原子力発電所数は434基、出力は4億788.2万kW

一般社団法人日本原子力産業協会が今年5月、『世界の原子力発電開発の動向(2021年版)』を刊行しました。

一般社団法人日本原子力産業協会のプレスリリースはこちら↓
https://www.jaif.or.jp/cms_admin/wp-content/uploads/2021/05/doukou2021-p...

主なポイントを紹介します。
・1986年のチェルノブイリ原子力発電所の事故で、最も大きな被害を受けたベラルーシでは、現在2基の原子力発電所(ロシア製)が建設中(*現在1号機はすでに運転開始)。ベラルーシにとっては初の原発で、最大の目的は電力輸出による外貨獲得。福島第一原発事故後に設定された最新の安全基準クリアを強調。
・新規計画中の原発は中国の29基を筆頭に全部で82基。
・脱原発方針を定めているドイツでは、これまで11基を閉鎖し、6基が運転中。
・安価に低炭素電源を調達する流れで既存炉の運転期間延長が進む。アメリカではほとんどの炉が運転期間を40年から60年へ延長済みで、今後さらに80年に延長する炉が増加する見込み。

・世界の原子力発電開発の運転・建設・廃止動向
https://www.jaif.or.jp/cms_admin/wp-content/uploads/2021/09/worldnuclear...
(以下、上記資料より抜粋)

順位 国・地域 運転中(基)
1 米国 94
2 フランス 56
3 中国 48
4 日本 10(33)
5 ロシア 34
6 韓国 24
7 カナダ 19
8 ウクライナ 15
9 英国 15
10 ドイツ 6

・ちなみに日本の原子力発電炉は、運転中は9基、停止中で運転可能炉は27基、24基が廃炉(*JPDR=茨城県東海村の日本原子力研究所で1963年から1973まで運転された日本初の発電用原子炉、ふげん、もんじゅは含まず)、(2021年9月28日現在)

・日本の原子力発電所の状況(資源エネルギー庁)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/001/p...

さらにこれまで月1原発映画祭で上映してきた『シェーナウの想い―自然エネルギー社会を子どもたちに』と『こんにちは貢寮(コンリャオ)』にちなんで、ドイツと台湾の話題をお届けします。

◆ドイツの脱原発は2022年に完了

2012年の第3回映画祭を最初に、これまで5回上映してきた『シェーナウの想い―自然エネルギー社会を子どもたちに』は、ドイツ・シェーナウ市の住民グループが、チェルノブイリ原発事故をきっかけに、原発に一切頼らない自然エネルギーの電力会社を誕生させるまでのプロセスを綴ったドキュメンタリーです。見るたびに、市民にも脱原発の実現に向かってできることはあると力づけられる映画でした。

※もう一度視聴したい人はこちら→ https://www.youtube.com/watch?v=g7FUorP4wAo
(2008年/ドイツ/60分)

 
現在ドイツでは6基の原発が運転を続けていますが、今年末には3基が、残る3基も来年末までに原子力法上の閉鎖期限を迎え、脱原発が完了する予定です。
「脱原子力」と「再生可能エネルギー拡大」がドイツのエネルギー政策の基本方針となったのは、社会民主党と環境政党「緑の党」による連立政権が発足した1998年。2002年の原子力法改正で原子炉の新規建設禁止と共に、各炉の発電電力の上限が決められ、その枠を使い切った炉から閉鎖されることになりました。脱原発の動きが順調に進む一方で、家庭向け電気料金が10年間で約1.7倍となったり、不安定な電力供給を補うために、石炭火力への依存が続くという問題も出てきました。

2010年にメルケル政権が、電力の低炭素化と経済性を確保しながら再エネ拡大を進めるために原子力活用を決断し、発電電力の上乗せを行い、全炉で平均約12年の運転延長が可能になりました。ところが福島第一原子力発電所の事故が起き、運転延長は撤回。2022年までにドイツは脱原子力を完了させることにしたのです。ドイツ政府は脱原発に伴い損害を受けた電力会社に総額約3,100億円を支払うことでも合意しています。

ただ再エネ発電量は確実に増加しているドイツも、温室効果ガス削減となると、道は明るいわけではありません。昨年は削減目標をクリアしていますが、これはコロナ禍のロックダウンによる経済活動低下の影響と考えられています。

ところでEUは2050年までに域内の温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げています。そのために原発の活用を表明している加盟国もあります。欧州では国境を超えた電力取引が常態化しているので、ドイツが脱原発を進めても、実際にはフランスをはじめとする近隣国の原子力発電による電力が流れていることも事実です。しかしドイツの脱電発の取り組みは自国でできることにまず手をつけたということであり、実際、毎年再生可能エネルギーによる発電量の比率が増え、外国から輸入する電力量は年々減っているので、原発依存が減っているともいえます。

※参考資料
・電気事業連合会 【ドイツ】2022年に脱原子力完了〜ドイツエネルギー政策のこれまでとこれから(2021/6/2)
https://www.fepc.or.jp/library/kaigai/kaigai_topics/1260470_4115.html
・EnergyShift 「ドイツはフランスの原発由来電力を輸入している」は本当か(2019/8/6)
https://energy-shift.com/news/686fba8d-956a-45a3-8b61-15b7dea97909
・独立行政法人労働政策研究・研修機構 ドイツの「脱原発」――事実はどうなのか(2011/5/25) *10年前の記事ですが歴史的経緯がよくわかります。
https://www.jil.go.jp/column/bn/colum0174.html

◆台湾は12月18日に公民投票で第四原発稼働の是非を問う

台湾第四原子力発電所(以下、第四原発)は、台湾で4番目の原発として計画されました。原子炉が日立製作所と東芝、発電機が三菱重工業による初の日本の輸出原発です。月1原発映画祭で上映した『こんにちは貢寮』は、この原発の建設地、貢寮(コンリャオ)の地元の様子を描いたドキュメンタリーです。

※当日の報告についてはこちら→ http://www.jtgt.info/?q=node/397
※映画の予告編はこちら→ https://www.youtube.com/watch?v=3CuMfpseXTI

第四原発の予定地に貢寮が決定したのは1983年。1994年の住民投票で98%が建設に反対したにもかかわらず、1999年に着工しました。しかし大規模な反原発運動が起きて世論が原発廃止に傾き、2015年に建設は凍結。2016年には総裁選で脱原発を掲げる民進党の蔡英文が大統領となって、2025年までの全原発の停止を定めた改正電気事業法が成立。ところが2017年に起きた台湾全土で全世帯の半数に影響が及ぶ大規模停電から、電力の安定供給への不安が高まり、2018年の住民投票で、蔡政権が法律に盛り込んだ「脱原発の法的期限」が撤廃されることになったのです。

蔡大統領は「第四原発の稼働は絶対に選択肢にない」との考えを表明し、エネルギー転換を全力で進め、太陽光発電や風力発電の割合を徐々に増やしていくとしており、約5〜6年以内には、発電量に占める再生可能エネルギーの割合が20%に達するとの見通しです。すでに台湾では、第一原発は運転期限の40年を超え廃止措置に入っていること、稼働中の第二、第三原発も2025年までに順次運転期限を迎えることから、第四原発が稼働しなければ、2025年の脱原発は成立します。

また、たとえ12月の選挙で(当初は8月を予定していたが新型コロナのため延期)原発賛成派が勝っても、建設許可期限が切れていることから、実際に第四原発を稼働させることは不可能な状況です。ただ、産業界を中心に原発の存続を望む人々は、選挙に勝つことで、「脱・脱原発」を盛り上げ、政権交代などを通じて原発の存続につなげたいと考えているようです。

※参考資料
・ノーニュークスアジアフォーラム「第四原発とお別れしよう! ― 12.18公民投票(国民投票)」
http://nonukesasiaforum.org/japan/archives/2260
・JIJI.COM「台湾、脱原発まで4年 再生エネ拡大に注力―根強い抵抗続く」(2021/3/9) https://www.jiji.com/jc/article?k=2021030800643&g=int
・西日本新聞「台湾揺れる脱原発路線 大停電で供給不安、建設再開巡り世論二分(2020/3/11)https://www.nishinippon.co.jp/item/n/590971/
・日本貿易振興機構アジア経済研究所海外研究員レポート「第4原発に関する国民投票は実施されるのか」(2013/4)→*これまでの台湾の原発と国民投票の歴史がわかります。
https://www.ide.go.jp/Japanese/IDEsquare/Overseas/2013/ROR201306_001.html 

*今回あらためて、「脱原発は難しい!」と感じました。「原発は必要である」の根拠として必ず出てくるのが、「原発はCO2をほとんど排出しないクリーンエネルギー」「電力の安定供給に原発は必須」「原発がなければ電気代が上がる(自然エネルギーはコストがかかる)」などです。私自身はさまざまな問題を解決するためにこそ技術開発があると思っているので、まずは脱原発を前提にして方策を探るべきと考えていますが。
再生可能エネルギー電力購入希望者を募る「みんなでいっしょに自然の電気(みい電)」キャンペーン(東京都などが主催)に参加して、わが家のエネルギーシフトを図ったのも、自然エネルギーによる電力を希望する人が増えることで、技術開発の後押しにつながると考えたからです。今秋、第4回みい電キャンペーンも始まります。
登録はこちら→https://group-buy.metro.tokyo.lg.jp/energy/shutoken/home
原子力エネルギーが安全なエネルギーに置き換わるまで「脱原発」を言い続けること、そして、自分自身の毎日の生活での「1にも2にも省エネ実践」。日々の電気使用量のグラフを見る習慣もつきました。(文責:阿部)

■インフォメーション

▪放射線被ばくを学習する会などが呼びかけ人となって、福島県県民健康調査検討委員会 などに申入書「福島甲状腺がん・「過剰診断」論を撤回し、検査を拡充すべきです」を提出するキャンペーンを立ち上げ署名を集めています。すでに第一次の署名提出は行われましたが、さらに多くの署名が集まることでメディアに取り上げられる可能性が高まります。第2次集約は12月末日です。
https://bit.ly/3uNTsZr

▪原子力資料情報室が主催する原子力をめぐる9つのテーマで7月から「連続ウェブ講座2021」(全9回)を開催しています。終了した講座を動画で視聴できます。
https://cnic.jp/39435

▪英文ウェブサイト『Nuke Info Tokyo』で34年間、日本の原子力産業の実情や脱原発運動に関する最新情報を世界に発信してきた原子力情報資料室が、今後の運営の安定した継続に向けてREADYFORを利用してクラウドファンディングを行っています。
https://readyfor.jp/projects/CNIC2021?argument=wV7LNzgg&dmai=a60ac7bfd02...

■1行ニュース

▪NHK:福島第一原発 汚染水処理のフィルター破損 2年前も同様の破損(2021/9/14)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210914/k10013258131000.html

▪朝日新聞: 福島第一原発建屋上部で高い放射線量 燃料デブリ並み、廃炉に影響も(2021/9/14)
https://www.asahi.com/articles/ASP9G753HP9GULBJ004.html

▪読売新聞: 1000年前「未知の巨大地震」が発生か、九十九里浜に大津波の跡(2021/9/25)
https://www.yomiuri.co.jp/science/20210925-OYT1T50201/

▪新聞赤旗:原発事故「国に責任」 愛媛避難者訴訟 高松高裁が判決 高裁で断罪3件目(2021/9/30)
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik21/2021-09-30/2021093001_03_0.html

■超ショートコラム「自分の言葉で伝えよう」

「新型コロナで不要不急の外出自粛を求められていましたが、家で一人でいるとエアコンをつけないと熱中症になるかもしれないし、ついテレビをつけてしまうし、ということで、図書館や美術館などに出かけるという省エネを実施。不要不急じゃないと思うんだけどなあ」(東京・HAさん)

このコーナーへの投稿を募集します。
お題: 「原発ないと困るでしょ」「原発ゼロの主張は無責任」って言われたら?/私の省エネ/わが家のエネシフトなど広くエネルギーに関わるものならなんでもOK。→200字以内、名前/ペンネーム、住んでいる地名などは投稿された方の任意とします。
投稿の原稿はメールでeigasai2021★jtgt.info宛てにお送りください。←★を@に置きかえてください。

■次回のニュースレター

次回は、「原発問題に関するお勧め本」をご紹介する予定です。

■ 月1原発映画の会

問い合わせ先  eigasai2021★jtgt.info ←★を@に置きかえてください。
http://www.jtgt.info/ (地域から未来をつくる・ひがし広場内)

月1原発映画祭ニュースレター第12号

「月1原発映画の会」スタッフの小林です。
月1原発映画祭ニュースレター第12号をお届けします。

■今月のトピック「避難できる? 東海第二原発」

今年(2021年)3月、水戸地裁は「避難体制が整えられず、安全性に欠ける」と、日本原子力発電に東海第二原発(茨城県東海村)の運転禁止を命じました。今号では、東海第二原発の基本情報と、今回の判決の意義をお伝えします。

◆東海第二原発はどんな原発なのか。まずは楽しく「漫才で」確認したいと思います。

◇「オカンが忘れた原発の名前は?(ミルクボーイふうに)」 作:平坂謙次(原発と足立を考える会)
http://www.jtgt.info/sites/default/files/2021-09-11-1.pdf

◇3年前(2018年)のNNNドキュメント「首都圏の巨大老朽原発 再稼働させるのか ‘東海第二’ 」に、わかりやすくまとめられています。(24分)
https://www.dailymotion.com/video/x6x1slt

日本原子力発電(株)とはどのような会社なのでしょうか。
日本に商用原子力発電を導入するために、電気事業連合会加盟の電力会社9社と電源開発の出資によって1957年に設立された卸電気事業者(略称は原電または日本原電)。
原電保有の東海発電所は日本最初の商業用原子炉で、現在は解体中、敦賀発電所1号機は廃炉決定済、敦賀発電所2号機は定期点検中、東海第二原発は停止中。

◆では次に、今回の裁判はどのようなものだったのかというと・・・

◇再稼働を目指す東海第二原発を巡り、11都府県の住民ら224人が原電に運転差し止めを求めた訴訟。前田英子裁判長は、原発の半径30キロ圏に94万人が暮らすことを踏まえ「実効性ある避難計画や防災体制が整えられているというにはほど遠い状態で、人格権侵害の具体的危険がある」と、判決の理由を説明した。事故時の避難計画の不備を理由に、原発の運転差し止めを認めたのは初めて。判決では、避難計画を策定しなければならないとされている30キロ圏に住む原告住民79人の請求を認める一方、それ以外の請求は棄却した。
(棄却された請求についてなど、詳しくはこちらの「判決要旨」をご覧ください) http://www.t2hairo.net/hanketsu/t2hanketsuyoushi.pdf

東京新聞:東海第二原発の運転禁じる 水戸地裁「防災体制は極めて不十分」(2021/3/18)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/92269

◇なお、原告、被告ともに控訴したため、二審は東京地裁で争われます。
東京新聞:原告側住民120人が控訴 東海第二原発の運転差し止め訴訟(2021/3/31)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/95030

◇弁護団長の河合弘之弁護士が、判決の意義をわかりやすく解説した動画はこちら。
20210416 UPLAN 河合弘之「水戸地裁 勝利判決をうけて(東海第二原発運転差止め訴訟)」
https://www.youtube.com/watch?v=_ZicQTYsC8U

(最初~43:30まで今回の判決の意義。その後30分ほどは脱原発裁判全般についてなど)
レジメはこちらから
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/files/efbc88e383ace382b8e...

◇「東海第2原発差止訴訟団」のサイトにはさらに詳しい情報が載っています。
http://www.t2hairo.net/

◆関連するその他の情報

◇避難計画については「内閣府原子力防災担当」(2014年に発足)が担っています。避難計画を策定するべき範囲など、こちらの「よくあるご質問」のページが(実現可能かどうかは別にして)わかりやすいです。
https://www8.cao.go.jp/genshiryoku_bousai/faq/faq.html

◇茨城県内には、東海第二原発の他にも、原子力関連の施設が複数存在します。
https://www.pref.ibaraki.jp/seikatsukankyo/gentai/shomu/bunakatu/images/... (茨城県公式サイトより)
その中でも、日本原子力開発機構の再処理施設(核燃料サイクル工学研究所)には、高レベル放射性廃液やガラス固化体があります。施設の廃止は決まっていますが、廃止完了には70年かかる予定です。東海第二原発とこの施設は2.8kmしか離れていません(上記地図②。原発は③)もし原発で事故が起これば、再処理施設にも影響が及ぶかもしれません。
朝日新聞:東海再処理施設の廃止作業2年ぶり再開へ 完了に70年(2021/8/16)
https://www.asahi.com/articles/ASP8J5WS3P8JULBJ00J.html

◇1999年9月、東海村にある核燃料加工会社JCO(上記地図⑪)で臨界事故が起こり、2名の作業員が死亡、近隣住民が被ばくしました。2年前の東京新聞の記事です。
<薄れゆく「青い光」 JCO臨界事故20年>(上)語れぬ苦しみ今も(2019/9/28)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/19329

◇日本原電は、保有する敦賀2号機の地質データを書き換えていました。このような会社に原発を運転する資格があるのでしょうか?
(朝日新聞社説)原発審査中断 原電に任せられるのか(2021/8/29)
https://www.asahi.com/articles/DA3S15025510.html

◇「とめよう!東海第二原発首都圏連絡会」では、毎月第1水曜日の夕方、日本原電本店(台東区上野5丁目)前で抗議行動を行っています。また、首都圏のさまざまなグループが各地で行う一斉行動(1回目はこの9月11日に実施)などを開催していく予定です。参加の希望やお問い合わせは、以下まで。
「とめよう!東海第二原発首都圏連絡会」stoptokai2.shutoken★gmail.com ←★を@に置きかえてください。

◇2019年7月、月1原発映画祭では 『恐怖のカウントダウン~東海第二原発を止めたい』(遠藤大輔監督)を上映しました。
http://www.jtgt.info/?q=node/2451

*今回改めて学んだのは「深層防護の考え方」でした。私なりの言葉でまとめると、原発は異常を起こさないように作られ運転されなければならない➡もし異常が起きても事故に発展させてはならない➡もし事故が起きても炉心を損傷させてはならない➡もし炉心が損傷しても放射能を施設外に出してはならない➡もし放射能が外に出ても、周辺住民が安全
に避難できる体制を作っておかねばならない。本当にこの防護を徹底しようとすれば、どこの原発も動かしてはならないはず。今回の判決は、他の裁判にも、また避難計画を作る各自治体にも影響を与えていくことと思います。が、まだ判決は確定していません。東京高裁での二審判決、再稼働に向けて工事を進めている原電の動き、ともに注目していきましょう。(文責:小林)

■インフォメーション

▪ 福島映像祭2021(主催:OurPlanet.TV)9月18日(土)~24日(金)ポレポレ東中野
http://fukushimavoice.net/fes/fes2021
(東海第二原発再稼働を問う県民投票実現を目指した市民運動の映画『県民投票』も上映されます)

▪福島原発刑事訴訟支援団【全6回:連続オンラインセミナー】 「責任は誰がとるのか ~東電刑事裁判 控訴審始まる~」
https://shien-dan.org/online-seminar-202108/

▪FoE連続オンラインセミナー  エネルギー基本計画素案を読む
https://www.foejapan.org/event/supt/6thenergyplan.html
第6次エネルギー基本計画(案)にパブリックコメントを!(10月4日まで)
https://www.foejapan.org/climate/policy/6thenergyplan.html

■1行ニュース

▪日本経済新聞:原発処理水を沖合1キロに放出 東電が方針、風評を抑制 (2021/8/25)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA249G40U1A820C2000000/

▪テレ朝news:全漁連「断固反対」福島第一原発処理水の海洋放出 (2021/08/25)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000226630.html

▪OurPlanet-TV:原発事故後の未公表データで食品から高濃度のヨウ素132〜福島県
(2021/8/25)
http://ourplanet-tv.org/?q=node/2597

▪毎日新聞:福島の帰還困難区域 20年代に希望者全員帰還へ 政府方針(2021/8/31)
https://mainichi.jp/articles/20210831/k00/00m/010/288000c

■超ショートコラム「自分の言葉で伝えよう」

このコーナーへの投稿を募集します。
お題: 「原発ないと困るでしょ」「原発ゼロの主張は無責任」って言われたら?
「五輪が終わって思っていること」「コロナ禍の自粛で考えたこと」などでも構いません。→200字以内、名前/ペンネーム、住んでいる地名などは投稿された方の任意とします。
投稿の原稿はメールでeigasai2021★jtgt.info宛てにお送りください。←★を@に置きかえてください。

■次回のニュースレター

次回は、「世界の原発の今」についてお伝えする予定です。

■ 月1原発映画の会

問い合わせ先  eigasai2021★jtgt.info ←★を@に置きかえてください。
http://www.jtgt.info/ (地域から未来をつくる・ひがし広場内)

月1原発映画祭ニュースレター第11号

「月1原発映画の会」スタッフの小林です。
月1原発映画祭ニュースレター第11号をお届けします。

■今月のトピック

今月は「福島復興五輪に思う」のテーマで、スタッフそれぞれの思いを集めました。
まずは、復興五輪のコンセプトを確認すると・・・

◆「復興五輪」(復興庁 復興五輪ポータルサイトより)

◎東日本大震災に際して、世界中から頂いた支援への感謝や、復興しつつある被災地の姿を世界に伝え、国内外の方々に被災地や復興についての理解・共感を深めていただくこと
◎大会に関連する様々な機会に活用される食材や、競技開催等をきっかけとして来ていただいた被災地の観光地等を通じて、被災地の魅力を国内外の方々に知っていただき、更に被災地で活躍する方々とのつながっていただくことで、大会後も含め「買ってみたい」「行ってみたい」をはじめとする被災地への関心やつながりを深めていただくこと
◎競技開催や聖火リレー等、被災地の方々に身近に感じていただける取組を通じて、被災地の方々を勇気付けること
等により、復興を後押しすることを主眼とするものです。
これは、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の理念の一つとして大会招致の時から掲げられてきたものであり、こうした目標が達成できるように復興の情報発信などに取り組んでいます。
https://www.reconstruction.go.jp/2020portal/reconst-olympic/
(各省庁の取り組みなども読むことができる)

◆招致から開催までの流れを追ってみました。

◇2009年10月 2016年五輪の招致に失敗
◇2011年3月11日 東日本大震災、福島第一原発事故発生。原子力緊急事態宣言発令(現在ももちろん解除されていない)

4月10日 東京都知事選挙で、石原慎太郎氏が当選(4期目)

7月 石原都知事が2020年五輪への立候補を正式表明。スピーチで、東日本大震災からの復興を世界に示す「復興五輪」であると語り、招致のテーマとなった
http://www.asahi.com/olympics/hosting-in-japan/TKY201107160297.html

12月 政府(野田佳彦首相)が、福島事故炉の冷温停止を宣言

◇2012年5月 国内向けの招致スローガン「今、ニッポンにはこの夢の力が必要だ」を発表。招致委員会による寄付サイトが立ち上げられた。

https://donation.yahoo.co.jp/detail/4720001/
12月 衆院選で自民党が勝利し、安倍晋三氏が首相に。同日の東京都知事選で、猪瀬直樹副知事が東京都知事に。

◇2013年8月 第一原発のタンクから汚染水約300トンの漏洩が見つかる。しかし翌月・・・

9月 五輪の東京開催が決定。招致演説で安倍首相が「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御(under control)されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません」と述べた。発言は、20年3月に首相が浪江町を訪れて、記者の質問に答えなかったときの動画で見ることができる。
【Choose TV 「コロナ時代のメディア」第一部より】「官邸HPから消された記者質問」
https://www.youtube.com/watch?v=u6v5Gfrqn6k

◇2015年6月 福島県知事が避難指示区域外の避難者に対する住宅の無償提供を17年3月で打ち切る方針を発表。記事は19年5月のインタビュー

〈原発事故避難者は今〉/住宅支援打ち切りの冷酷さ
https://www.rengo-news-agency.com/2019/05/29/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF...

◇2018年7月 聖火リレーのスタート地を福島県とすることを決定

9月OurPlanet.TV 海外メディア向けに「復興五輪」をPR
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2307

◇2020年2月OurPlanet.TV  復興五輪のかげで〜聖火リレーが映すもの、映らないもの(取材・撮影:豊田直巳)

http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2472
3月 コロナウィルス感染拡大により、五輪の1年延期を決定。安倍首相「人類が新型コロナに打ち勝った証として、完全な形で開催する」

9月 菅義偉氏が首相に。

◇2021年3月25日 楢葉町のJヴィレッジから聖火リレーがスタート

福島・聖火リレー「復興途上の街並み」ルート幻に 組織委同意せず(毎日新聞7月15日)
https://www.youtube.com/watch?v=KLx7P0EVN8I

6月 OurPlanet.TV「復興五輪?ふざけんな!」吠える福島県の牛飼い・吉沢正己 (取材・撮影:豊田直巳)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2573
7月10日 首都圏や北海道に続き、福島県も無観客での開催を決定
「復興五輪の意義、見いだせない」福島も無観客、現地しらけムード(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20210710/k00/00m/050/272000c?cx_fm=mailasa&...

7月18日 復興五輪、看板倒れ…選手食堂での被災地食材アピール見送り「一部の国から拒否の声」に抵抗できず(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/117584

7月21日 橋本聖子会長驚き「入ってると思っていた」発表文書に復興五輪記載なく(日刊スポーツ)
https://www.nikkansports.com/olympic/tokyo2020/news/202107210000768.html

7月23日~8月8日 五輪開催

◆さて、五輪開催費用は・・・ 招致時の7340億円から1兆6440億円へ

TOKYO2020組織委員会およびその他の経費 20年12月発表 
https://olympics.com/tokyo-2020/ja/organising-committee/budgets/

しかしこれだけでは収まらないようです。19年12月会計検査院の報告によると、「関連支出」だけで、18年度までの6年間に約1兆600億円が使われています。上記費用と合わせると3兆円を超えることになります。(media close-up report 7月14日)
https://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015/e/bb3f9e2f7a76ab4e9d5bfbd53ad75f1a

◆月1原発映画祭スタッフの「福島復興五輪への思い」を集めました。

◇「今、ニッポンにはこの夢の力が必要だ」この言葉を聞いたとき、強烈な違和感を持ったのを覚えています。原発事故という現実を見ずに、夢を見ようとは、この国はいったい何を考えているのか、と。それに対して、どこで見たのか思い出せないのですが、「今、ニッポンには現実を見る力が必要だ」と書かれた方がいてとても共感しました。10年がたち、原発事故の後始末や被害者の方々の現実はますます見えづらくなりました。現実から目をそらせようとする力にだまされないように、関心を持ち続けていきます。

◇2013年9月7日、ブエノスアイレスのIOC総会で行われた当時の安倍晋三首相の招致スピーチを改めて見てみました。国立競技場建て替えも、招致のために「どこにも見られない斬新な設計の新しいスタジアム」が欲しかっただけだということがよくわかります。最初の国立競技場案、エンブレム案とも白紙撤回。買収問題が発覚し内部告発も。ボランティアユニフォームのデザインが没になり、費用はかさみ、1年延期、森喜朗組織委会長の差別発言と辞任、開会式の演出家と作曲家も次々とやめ、望まない国民のほうが多い中、無観客で、強行開催。その始まりとなった2013年9月7日のことは忘れてはならない。それぞれ5分強と3分弱ですので、忘れそうになったら、繰り返し見たい映像です。
「事態はアンダーコントロール」
https://www.youtube.com/watch?v=zf90ImlFDuU

「汚染水は福島第一原発の港湾内0.3k㎡で完全にブロックされています」
https://www.youtube.com/watch?v=zJK-DZpGNOE

◇2013年9月のIOC総会で、当時の安倍晋三首相が、東京五輪招致に向けて、福島第一原発の状況を「アンダーコントロール」と述べたときにはひっくり返るほど驚いた。その後、復興支援で何度か訪れていた岩手県で、建設に関わる人や重機が、被災地の工事を放り出して東京の五輪関連建築に移っていくのを見た。復興五輪と言いながら、復興にはえらく迷惑な話になっていると思った。コロナで1年延期が決まったときも、直前まで開催をめぐるすったもんだが続いたのも、私には「アンダーコントロール」発言へのしっぺ返しとしか思えない。五輪を見て選手たちの活躍に感動するのは、五輪開催の是非とは全く別の話だ。復興庁の復興五輪ポータルサイトもなんだか無理やりこじつけているみたいで虚しい。
下は現実を伝える福島民放テレビの番組。
https://news.yahoo.co.jp/articles/07846ceb6b79918ecb833a28f71ec41c47533960

◇復興五輪という言葉を聞くと、安倍元首相による五輪招致のスピーチの中の「アンダーコントロール」という言葉が脳裏によぎる。当時は事故を起こした原発の汚染水が海に流れ出ていて、湾内に張り巡らせたフェンス一枚で遮っていた。当然こんなものでは汚染水を遮れるものではなかったが、招致委員は安倍元首相を批判することなく東京五輪が決まった。後に、五輪招致のための賄賂工作などが明らかになっているが、国内で司法が乗り出した形跡はない。

当初より福島の復興にどのように五輪を絡めるのかについて理解に苦しんだが、五輪が開催されてみても、五輪によって福島の復興が恩恵を受けた形跡はまったく感じない。あるのは政治的パフォーマンスと電通などへの利権にまみれた無駄なお金の垂れ流しである。これは、福島の除染作業を始めとするお金の使い方、アベノマスクに象徴される利権団体へのお金の流れと通じるものがある。先頃、ツイッターで、「五輪の費用は都民1人あたり10万円」というのが話題になっていたが、膨大な税金をつぎ込みながら中身の薄い対策しか行えないという面で共通している。

「安全安心」というスローガンも福島と五輪で共通する。原発については安全安心という神話が国民には刷り込まれてきた。しかし、まともな津波対策、事故対策が取られておらず重大事故を招いてしまった。コロナ禍での五輪では管首相による安全安心というかけ声がむなしく繰り返される。空港での選手団が一般客と混ざってしまっている状況や、相次ぐ選手や関係者の感染など、安全安心からはほど遠い。この原稿を書いている五輪開催中である昨日(7月31日)の都の新型コロナ感染者数は4058人と過去最大である。

原発・五輪・コロナを通じて、そろそろ気がつこう。政府が「安全安心」と繰り返し説明する時は、「安全ではないが国民は安心だと信じ込め」という政府による刷り込み・洗脳の意図がある。いわば「危険安心催眠術」ともいえる。安全安心のかけ声のもとに巨額の税金が投じられる時は、利権にまみれた実益の薄いお金の流れがある。電通を始めとするマスコミはこの洗脳に与して、利権の一部を吸い取っているから、安全安心に対する批判はほとんど報道されない。安全安心は政府にとって黄金の方程式であり、水戸黄門の印籠のようなものである。これを打ち破るには、大多数の国民がこのからくりに気がつく必要がある。野党はこれを政府打倒の道具として欲しい。

復興五輪という空虚な言葉は、このような2021年時点の日本の無様な政治や社会の有様を、末永く後世に伝えるレジェンドとすべきである。

■インフォメーション

▪東京五輪開会式の夜、スイス国営テレビのドイツ語放送で放映されたドキュメンタリー『サイレント福島』。スイス・日本人映画監督のアヤ・ドメーニグ最新作。Vimeoにて364円でレンタル視聴できます。
https://www.ayadomenig.ch/?fbclid=IwAR2WzGsNrSts0DmGpraqfrzFmQAXumJF3OJ10KBH (51分)

▪ドキュメンタリー映画「発酵する民」横浜ジャックアンドベティにて 8月14日~上映 
東日本大震災・原発事故から10年。あの時に生まれたものは、今も確かに続いている。
コロナ禍の今を照らす、発酵ドキュメンタリー!(平野隆章監督・92分)
https://www.jackandbetty.net/cinema/detail/2598/

▪第107回 VIDEO ACT! 上映会 ~あれから10年・福島県双葉町~
上映作品『原発の町を追われて・十年』(2021年/日本/53分)監督:堀切さとみ
9月14日(火)19時~ 東京ボランティア・市民活動センター(飯田橋)にて
上映後、監督を交えたトーク&ディスカッションを予定。要予約。参加費500円
http://videoact.seesaa.net/article/482815253.html

■1行ニュース

▪OurPlanet.TV:南相馬「特定避難勧奨地点」解除の取り消し認めず〜 東京地裁 (2021/7/12)
http://ourplanet-tv.org/?q=node/2579

▪NHK: 2030年時点の発電コスト 太陽光が最安に 原子力を初めて下回る
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210712/k10013135341000.html

▪NHK:「エネルギー基本計画」再生可能エネルギー割合36~38%に(2021/7/21)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210721/k10013151741000.html

▪朝日新聞:黒い雨訴訟の原告「首相談話、根本的解決策にならない」(2021/7/28)
https://www.asahi.com/articles/ASP7W7QX0P7WUCLV00D.html
(ニュースレター第5号でもお知らせした広島の「黒い雨」裁判は、国が上告をあきらめ、原告の訴えが認められました。しかし内部被爆については認めないとあります)

▪朝日新聞:経産省、放射性廃棄物の輸出を検討 廃炉の大型機器想定(2021/8/6)
https://www.asahi.com/articles/ASP866FPTP86ULFA010.html?iref=pc_ss_date_...

■超ショートコラム「自分の言葉で伝えよう」

このコーナーへの投稿を募集します。
お題: 「原発ないと困るでしょ」「原発ゼロの主張は無責任」って言われたら?
「五輪が終わって思っていること」「コロナ禍の自粛で考えたこと」などでも構いません。→200字以内、名前/ペンネーム、住んでいる地名などは投稿された方の任意とします。
投稿の原稿はメールでeigasai2021★jtgt.info宛てにお送りください。←★を@に置きかえてください。

■次回のニュースレター

次回は、「避難は実現可能? 東海第二原発運転差し止め判決の意義」についてお伝えする予定です。

■ 月1原発映画の会

問い合わせ先  eigasai2021★jtgt.info ←★を@に置きかえてください。
http://www.jtgt.info/ (地域から未来をつくる・ひがし広場内)

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