2021年7月21日(水) 変えよう選挙制度の会7月例会「東京都議選の結果の分析と課題」報告

変えよう選挙制度の会7月例会「東京都議選の結果の分析と課題」報告

 七月二一日に東京ボランティア・市民活動センターの会場とオンラインで開催。会場参加は十名、オンライン参加は九名。報告者は田中久雄当会代表。司会は当会の紅林進。
 田中氏の報告では、今回の都議選の一般的評価として、①史上二番目の低投票率、②「勝者なき都議選」、③事前予想に反して自公で過半数獲得できず、④公明は苦戦を予想されたが、今回も全員当選、⑥都民ファーストの会の予想外の善戦、⑦立憲民主と共産の定数三人以下の選挙区での選挙協力(しかし一部は協力不成立)にもかかわらず、全体では事前予想を下回った、を挙げた。
 なお選挙区定数は、一人区が千代田区など七選挙区、二人区が文京区など十五選挙区、三人区が目黒区など七選挙区、四人区が品川区など五選挙区、六人区が足立区と杉並区、七人区が、大田区と練馬区、八人区が世田谷区、というように一人区から八人区まである。その中では、人口が少ない選挙区よりも人口の多い選挙区の方が定数が少ない「逆転現象」も見られる。これらを是正するため、共産党と生活者ネットが「五増五減」を提案したが、都民ファースト、自民、公明が提案した「一増一減」の定数是正に終わった。
 次に各政党の選挙公約を比較した。(各党、コロナ対策など、様々な政策を掲げるが紙幅の関係で省略)(注)参照
 また各党の当選者数、得票率、女性の候補者の割合などを図表で示した。近年の都議選で女性の議員は増えてきたが、今回の都議選で女性の候補や当選者が一番多かったのは共産党であった。なおマスコミの選挙予想はいずれも外れた。二〇〇一年以来の都議選の各党の得票率の推移を見ると公明党と共産党はほぼ一定しているが、自民党は低下する傾向にある。
 自公で過半数を取れなかった理由として田中氏は、自公の選挙協力が復活し、低投票率だと従来は自公に有利だと言われているにもかかわらず、今回振るわなかったのは、①政権のコロナ、オリパラ対応や政治と金の問題への不満・不信、予想外の都民ファの善戦、③自公(とりわけ自民)の集票力の低下、④自民支持層でも実際には他党に投票(読売調査では自民支持層の五七%しか自民に投票せず)、⑤立憲・共産の選挙協力の効果、を挙げた。
 また都民ファーストの善戦の理由としては、①終盤の小池知事の応援、②「オリパラ」の無観客の主張、③コロナ対策で「国策の失敗」を訴え、④非自民の投票の受け皿、⑤無党派層の取り込みに成功、などを挙げた。なお朝日新聞の出口調査によると、無党派層(二三%)の投票先は都民ファが二五%で最も多い。公明党支持層で、公明党候補がいない選挙区では、八二%が自民に投票、共産党支持層では、共産党の候補がいない選挙区では、七七%が立憲に投票、立憲支持層では、立憲の候補がいない選挙区では、五一%が共産に投票)
 立憲と共産の選挙協力の成果としては、連携成功で議席を獲得した選挙区として文京区、中野区、武蔵野市、立川市、日野市など、連携失敗で取りこぼした選挙区として港区、西東京市、南多摩、北多摩三などの事例が示された。後者の選挙区では、連携すれば一位当選や二位当選が可能であった。なお都民ファの善戦で、無党派層が奪われ、立憲と共産の選挙協力の効果は、事前予想を下回った。
 今後の都議会の見通しとしては、①都議会議長は第一党の自民党が占める、②自公、都民ファ、共産・立憲の三ブロック間の駆け引きとなる、③小池知事に対する自公の対応が焦点となる、④公明は再び与党化する可能性が高いが、都民ファと公明だけでは過半数が取れない、⑤都議会自民党も与党化する可能性も、⑥都民ファは党の独自性や支持した有権者にも配慮しなければならず、自公との関係が微妙になる可能性も、⑦共産と立民は野党として共同行動をとる可能性が高い、などを挙げた。
 都議選の結果が衆議院選挙へ与える影響と今後の政局について、①国政選挙の「先行指標」、②自民の衆参補選や千葉・静岡知事選の負けに続き、菅政権で大丈夫かとの不安から、衆議院解散時期と自民総裁選に与える影響、③自公協力の効果が頭打ちになったことから、維新との連携も視野に、④都議選の結果を踏まえた立憲と共産の選挙協力の強化、⑥連合と立憲と国民の連携がぎくしゃくする、⑦国民民主は存在感が希薄化、生き残り策として小池新党に期待、などを挙げた。
 最後に都議会に留まらず都道府県議会議員選挙の問題点として、①投票率の一貫した長期低落傾向、②定数一人区から一七人区まで大きなばらつきがあり、一人区四〇・一%、二人区三〇・一%とそれで七割を占め、そのため有力な政党・政治家が恒常的に議席を獲得、③議員のなり手不足により、無投票当選や定数割れが危惧されている。全国平均で三七%の選挙区が無投票当選。(七割近くに及ぶ県もある)、④地方議会の議員は高齢者が多く、若手の議員が極端に少ない。六〇歳以上の議員は都道府県議会では約四割を超えている、などを挙げた。そして田中氏は、都道府県議会議員選挙を比例代表制に移行するのが望ましいと述べた。
 その後、会場とオンライン参加者を交えての質疑応答と意見表明や議論が活発に行われた。しかし議論が盛り上がったところで、緊急事態制限下で、会場の利用時間が制限されている関係で、議論は打ち切らざるを得なかった。
 なお変えよう選挙制度の会の月例会は、来月八月はお休みで、次回は九月八日(水)を予定しています。テーマはまだ未定ですが、改めてご案内いたします。
                                                                                                                                  文責:紅林進   

(注)各政党の主な都議選公約
政党名     主な公約
都民ファースト:世帯年収に応じた年間最大一五万円を給付。携帯電話料金を月額三〇〇〇円補助。「爆速」ワクチン接種。
自民:個人都民税を二〇%減税。事業所税を五〇%減税。ワクチン接種の加速化。
公明:第二子の保育料を無償化。高校三年生までの医療費を無償化。
共産:都立・公社病院の独立行政法人化を中止。羽田空港の新飛行ルートの撤回。PCRなど大規模検査。オリンピック・パラリンピックの開催中止。
立憲民主:都独自の給付型奨学金を実施・拡充。就労支援などで二万人超の雇用創出。保健所の体制強化やPCR検査の拡充。
生活者ネット:東京都こども基本条例を生かす。介護従事者を支えるケアラー支援条例制定。専門家チームをつくり医療崩壊防止。
維新:二兆円規模の大胆な経済対策。バーチャル都庁構想で第二都庁舎を売却・貸出。コロナは営業停止命令と補償・罰則はセットで。
国民民主:透明性とスピード重視の事業者支援強化。子ども・保護者の鉄道や公園利用を無料に。コロナの頻回検査とデジタル証明。
れいわ:都民一人ひとりに一〇万円支給。中小企業・個人事業主に損失補償。新型コロナを「災害指定」に。

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