NGOメコン・ウォッチの声明「ミャンマーの国軍による非常事態宣言に強い懸念 日本政府は同国の真の民主化へ更なる働きかけを」

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【声明】ミャンマーの国軍による非常事態宣言に強い懸念
日本政府は同国の真の民主化へ更なる働きかけを
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20210201.pdf
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みなさま

すでに各方面で大々的に報じられていますが、本日、ミャンマー国軍が非常事態宣言を出し、政権を掌握したことを発表しました。メコン・ウォッチは強い懸念を示し、日本政府に働き掛けを求める、以下の声明を発出しました。

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2021年2月1日
【声明】ミャンマーの国軍による非常事態宣言に強い懸念
日本政府は同国の真の民主化へ更なる働きかけを

メコン・ウォッチ

本日 2021 年 2 月 1 日現地時間、ミャンマー国軍は非常事態宣言を出し、政権を掌握したことを明らかにしました。アウンサンスーチー国家顧問兼外相、ウィンミン大統領など多数の政権幹部の身柄が国軍に拘束された他、国軍出身のミンスエ副大統領が暫定の大統領を務め、立法・行政・司法の全権をミンアウンフライン国軍総司令官が統治、と報道されています。そして、首都ネピドーで一般市民の電話やインターネット回線が遮断され、最大都市ヤンゴンでも通信状況が不安定な状態だと伝えられています。

国軍は昨年 11 月の総選挙の結果に不正があったと主張し、その調査をするとしていますが、国連事務総長は、1 月 28 日の声明で、すべての関係者に 11 月の選挙結果を尊重するように求めていました[1]。
選挙で選ばれた代表をその地位から軍事的な手段により排除することは、民主主義の原則に反し、容認されるべきものではありません。

日本政府は、2011 年に始まった民政化の流れの中でミャンマー政府を政府開発援助(ODA)で支援し、2013 年から 1 兆 1,368 億円の有償資金協力資金、3,229.62 億円の無償資金協力、984.16 億円(2017年度までの累計)での技術協力を実施しています[2]。2013 年には過去 20 年の債務の遅延損害金 1,761億円が免除されたほか、円借款の再開にあたり延滞債務の債務免除として、1,989 億円の借り換えを支援するなど、日本政府はこれまで、ミャンマーに多大な支援を行なってきました。

本日、日本政府が外務大臣談話として「ミャンマー国内情勢について」を発表し、アウンサンスーチー国家顧問を含む関係者の解放を求め、ミャンマーにおいて民主的な政治体制が早期に回復されることを、改めて国軍に対し強く求めたことは、歓迎すべき動きです。

日本政府は開発協力大綱で、普遍的価値の共有と平和で安全な社会の実現をうたい、「質の高い成長」による安定的発展を実現するために、発展の前提となる基盤を強化する観点から、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値の共有や、平和で安定し、安全な社会の実現のための支援を行う、と世界に宣言しています。今回のミャンマー国軍の行動は、この普遍的価値への挑戦であり、多くのミャンマー国民が選挙で示した民意を無視する非民主的な行為です。日本政府は、引き続き、真の民主化に向けた強い働きかけを行なっていくべきです。

一方で、そもそもミャンマーでは、「民政化」後も国軍は政府の監督下にはありませんでした。国の監査機関は、国防予算を監査する権限がなく、2008 年に制定された現行憲法の 20 条bには、「軍の全ての業務の管理および裁定において、軍務は独立する権利を有する」、と定められ、治安関係の省庁は軍が管理してきました。また、現行憲法は、民政化の際に当時の軍事政権が制定し、軍人議員の定数が25%と定められています。2015年から国政選挙があり国会も開催されてきたとはいえ、同国で憲法の改正には、議会の上下院の議員 75%を超える賛成が必要であり、国軍が国内で政府から独立した権限を持つことを可能にしてきたのです。

今回の事態に至ったことは、日本のみならず国際社会のミャンマー民主化への取り組み、特に、さまざまな人権侵害の罪に問われている国軍への対応が適切でなかったことを示しています。国連のミャンマーに関する事実調査団が 2019 年 8 月 5 日に発表した、『ミャンマー国軍の経済的利益についての報告書(”The economic interests of the Myanmar military”[3])』は、「国軍が国内外の商取引から得る収入により、深刻な人権侵害を行う能力を高めている」と指摘しています。ミャンマーの民主化に不可欠な要素の一つは、国軍の持つ防衛予算とその他のビジネスからの歳入、支出の透明化です。

日本政府は、ミャンマーの情勢が正常化した上で、民主化プロセスが再び軌道に乗り、真に文民統治が確立されるまで、同国への ODA 支援の在り方を見直すべきです。仮に、ミャンマー国軍が情勢の正常化に応じない場合、人道支援以外の ODA は開発協力大綱に則り直ちに停止し、ODA以外の公的な融資等も停止を含め緊急に見直す必要があります。

また、メコン・ウォッチが繰り返し指摘してきたように、これまでに ODA 以外で国際協力銀行(JBIC)や、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)などの公的資金によるミャンマーでの事業が国軍を裨益していないか、直ちに調査し、その収入源を断つ処置をとるべきです。

[1] https://www.un.org/sg/en/content/sg/statement/2021-01-28/statement-attri...
[2] https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/myanmar/data.html#section5
[3] https://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/MyanmarFFM/Pages/EconomicInterests...
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