NHK Eテレ「100分de名著」マルクス『資本論』

NHK Eテレ「100分de名著」マルクス『資本論』
https://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/105_sihonron/index.html

【指南役】斎藤幸平(大阪市立大学経済学部准教授)
 …日本人初、史上最年少でドイッチャー記念賞を受賞した俊英。
  著書に「大洪水の前に」「人新世の資本論」などがある。
【朗読】岡山天音(俳優)
【語り】目黒泉

第1回 「商品」に振り回される私たち
【放送時間】2021年1月4日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ
【再放送】2021年1月6日(水)午前5時30分~5時55分/Eテレ
     2021年1月6日(水)午後0時00分~0時25分/Eテレ

第2回 なぜ過労死はなくならないのか
【放送時間】2021年1月11日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ
【再放送】2021年1月13日(水)午前5時30分~5時55分/Eテレ
     2021年1月13日(水)午後0時00分~0時25

第3回 イノベーションが「クソどうでもいい仕事」を産む!?
【放送時間】2021年1月18日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ
【再放送】2021年1月20日(水)午前5時30分~5時55分/Eテレ
     2021年1月20日(水)午後0時00分~0時25分/Eテレ

第4回 〈コモン〉の再生
【放送時間】2021年1月25日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ
【再放送】2021年1月27日(水)午前5時30分~5時55分/Eテレ
     2021年1月27日(水)午後0時00分~0時25分/Eテレ

※放送時間は変更される場合があります。

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 猛威をふるい続ける新型コロナウィルス禍。
 それは人々の健康だけでなく、世界経済に大きな打撃を与え続けています。
 派遣労働などの非正規労働者の切り捨て、サラリーマンの給与カットやリストラ、相次ぐ中小企業の倒産等々…すでにその影響はじわじわと現れています。
 アフター・コロナの経済対策は、今、喫緊の課題として我々に迫ってきています。

 そんな中、今、再び19世紀の思想家カール・マルクスの著作が多くの人たちに読まれ始めています。
 とりわけ私たちがその只中で生活している経済システムの矛盾を明らかにしてくれる『資本論』が大きな脚光を浴びているのです。

 マルクスという名前を聞くと、ソ連や東欧諸国の崩壊以降はもはや時代遅れの思想と考える人も多いかもしれません。
 ところが、最近少し違った流れも出てきています。
 驚いたことに、アメリカでも、マルクスの名前が、若者たちのあいだで肯定的に使われるようになっています。
 アメリカの若者たちは、日本の若者たちと同様に、大学のローンを背負って社会にでても安定した仕事がなく、気候変動が深刻化する未来に不安を募らせています。
 そうした中で、資本主義では問題は解決しない、もっと抜本的改革が必要だとして、新たな社会像を考えるためのヒントをマルクスの思想に求め始めています。
 また、バルセロナ等の都市では、住宅や水、エネルギーといったコモン(共有財)を、利潤のみを追求し続ける大企業から市民の手に取り戻し、自分たちの力で水平的に共同管理していこうという試みも始まっています。
 それは、マルクスが「資本論」で「アソシエーション」と呼んだ仕組みに極めて近いあり方といえます。

 経済思想研究者の斎藤幸平さんは、ソ連や中国といった既存の社会主義国家にはなかった全く新しい社会ヴィジョンが、マルクスがその生涯をかけ執筆した大著『資本論』のうちに眠っているといいます。
 マルクスによる「商品」、「貨幣」、「労働」、「資本」などについての鋭い分析は、執筆された150年前の当時と今では状況は異なっているにもかかわらず、全く古びていません。
 その可能性を読み解くとき、私たちが、今後どのような社会を構想すべきかという大きなヒントが得られるというのです。

 世の中には『資本論』のたくさんの入門書はありますが、『資本論』に眠っている、将来社会という観点から読み直すものはあまりありません。
 そこで、番組では、グローバル資本主義社会が行き詰まり、その暴力性をむき出しにしつつある中で、もう一度、別の未来の可能性を、マルクスの代表作『資本論』を通して考えてみたいと思います。

第1回 「商品」に振り回される私たち
【放送時間】2021年1月4日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ
【再放送】2021年1月6日(水)午前5時30分~5時55分/Eテレ
     2021年1月6日(水)午後0時00分~0時25分/Eテレ
※放送時間は変更される場合があります。

 資本主義下では、社会は豊かになっていくのに一部の人々はますます貧しくなっていく。
 この「富のパラドックス」をマルクスは鋭く分析した。
 もともと水や土地、エネルギーといった公共財は無償であり潤沢に存在していた。
 ところが資本主義黎明期、これら公共財は、もっとお金が稼げる「商品」として農民から強制的に引きはがされる。
 いわば資本によって公共財が解体され「希少性」が人工的に生み出されていった。
 結果、農民たちは賃労働をせざるを得ない賃金労働者へと変貌。
 「商品」に頼らないで生きていくことはもはや不可能に。
 「商品」を購入するには「貨幣」が必要だ。
 だから「貨幣」を求めて人々は必死に働かなければならないが、多くの人は借金、貧困、失業の脅威に晒され続ける。
 一方で一部の人はますます富をため込んでいく。
 第一回は、「希少性」に取りつかれた社会の不安定性と矛盾にメスを入れることで、私たちがいかに「商品」というものに翻弄されているかを明らかにする。

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第2回 なぜ過労死はなくならないのか
【放送時間】2021年1月11日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ
【再放送】2021年1月13日(水)午前5時30分~5時55分/Eテレ
     2021年1月13日(水)午後0時00分~0時25分/Eテレ
※放送時間は変更される場合があります

 働きすぎが引き起こす悲劇「過労死」。
 マルクスは150年も前に、既にこのメカニズムを明らかにしていた。
 資本が「無限に終わらない価値増殖運動である」ことを見抜いたマルクスは、価値増殖をもたらすのが、労働者が受け取る賃金とそれを超えて生み出される商品の価値との差額であることを明らかにし、これを「剰余価値」を呼んだ。
 資本の価値増殖運動に巻き込まれた資本家たちは、少しでも多くの剰余価値を得るために、労働者の労働時間を常に延ばそうとしてしまう。
 労働者も自らこの論理を内面化し、価値増殖運動の歯車になってしまう。
 第二回は、無限の価値増殖運動である資本主義がやがて労働者を過労死にまで追いやってしまう矛盾を明らかにし、この暴走にブレーキをかけるためには何が必要かを考える。

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第3回 イノベーションが「クソどうでもいい仕事」を産む!?
【放送時間】2021年1月18日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ
【再放送】2021年1月20日(水)午前5時30分~5時55分/Eテレ
     2021年1月20日(水)午後0時00分~0時25分/Eテレ
※放送時間は変更される場合があります

 AIをはじめとする「イノベーション」で、さまざまなことが便利になった現代。
 つらい労働は機械に任せて、人間は快適で充実した人生を送れるようになるはずだった。
 しかし、現実は「ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)」といわれる労働だけが増え続け、逆に労働者の負担は減るどころかますます増えるばかり。
 いったいなぜこんなことが起こるのか?
 資本主義下、企業間の競争が激化する中でのイノベーションは、効率化を求めるあまり過度な分業化を推し進めてしまう。
 その結果、本来豊かな労働を「構想」と「実行」に分離、創造的な「構想」のみを資本家が奪い、単純労働のみを労働者に押し付けるといった過酷な状況が構造的に生じてしまうという。
 第三回は、「資本論」を読むことでイノベーションの矛盾を浮かび上がらせ、本来あるべき豊かな労働を取り戻すには何が必要かを考える。

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第4回 〈コモン〉の再生
【放送時間】2021年1月25日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ
【再放送】2021年1月27日(水)午前5時30分~5時55分/Eテレ
     2021年1月27日(水)午後0時00分~0時25分/Eテレ
※放送時間は変更される場合があります

 晩年のマルクスは『資本論』全体の構想に再検討を迫るような理論的転換を遂げようとしていた。
 これまで刊行されてこなかった手紙や研究ノートを読んでいくと、晩期マルクスが環境問題と前資本主義段階の共同体への関心を深めていったことがうかがえる。
 このような読み解きをしていくと、マルクスが最終的に思い描いたコミュニズムは、水、土地、エネルギー、住居など私たちにとっての共有財産である「コモン」を取り戻すことを目指したものだということがわかるのだ。
 第四回は、生産力至上主義として批判されてきたマルクスが、気候変動や環境問題といった喫緊の問題を乗り越えるビジョンをもっていたことを『資本論』と晩年の思想を読み解くことで明らかにし、現代社会を生きる我々が何をなすべきかを考える。

NHKテレビテキスト「100分 de 名著」『資本論』2021年1月 2020年12月25日発売
詳しくはこちら→ https://www.nhk-book.co.jp/list/series-33014.html

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