地下貯水槽汚染水漏れ問題
地下貯水槽汚染水漏れ問題が取り上げられている昨今ですが、基本的なことから考えてみたいと思います。
この分野に詳しい専門職の方に解説いただきました。難しく感じる方もおられると思いますが、読んでください。
これから少なくとも数十年は、確実に汚染水問題と向き合わなければいけない日本です。
【構造】
地下貯水槽の遮蔽処理に使用されたシートは、上部2層がポリシート、最下層は、ベントナイト(粘土鉱物)を縫い込んだシートの3層構造になっています(ベントナイトは乾燥状態、硬い粒状)。
【これまでの用途】
仮置き場、地下水位(←例;地下水位が高いと掘った穴の底部に貼ったシートが水浸しになるような意味。*ここが重要です)のない深さに掘り込んで、フレコンバッグ(廃棄物を入れる袋)を重ね、これをシートで覆い、30cmの土を被せる仕様として、その最も底部用に開発されたもの
【ベントナイトの役割】
バッグから放射性物質が漏れた場合(水分とともに漏れ出る)、このベントナイトが有効なバリアーとなります。
この仮置き場の掘削深度の設定は、地下水位のないレベルまでとされています(現地でボーリング調査する目的は、地下水位の把握)。
ベントナイト遮蔽は、元々、地下埋設の放射性廃棄物処理場の遮蔽材の最も外側に使用されているもので(コンクリート遮蔽体の外周)、ベントナイト鉱物が3重の層状となっていることから、この層を通過しての汚染水の透水係数が極小さくなり、放射性物質の漏洩の低減化をはかるものです(遮水のためのメンブレン効果と呼称されます)。
【今回の汚染水漏れ】
今回の最も大きな問題は、地下水位のない部分の掘削等ではあったが、むしろ、その目的が、水を溜めることです。
恐らく、福島第一以外に水を溜める目的の施工例が初めてなのではないでしょうか?
【ベントナイト遮蔽の問題点】
今回の地中埋設では、注水水深が小さく、徐々に溜めていくことから拘束圧力が小さく、この段階で漏水があれば(ポリシートの接合不良等で少量の漏水)、ベントナイトの膨張を許すことになり、ベントナイトがふやけてしまって、遮蔽効果がなくなることが容易に予想されます。
⇒ベントナイトは一旦吸水・膨張すると膨潤圧が大きくなっていく
⇒注水深がそれほど大きくない(=圧力がかかっていない)ため、膨潤を大きくゆるす
⇒やがて無限大に水分を吸収して、トロトロのお粥状になる
⇒多量の漏水を許すことになる
⇒基本的な欠陥と考えられる
このような施工計画では、設計にあたり、まず、遮水シートをあらかじめ圧迫して抑えておく必要があります(ベントナイトの膨潤抑制工の必要性)。
このため、コンクリート等の上載荷重を効かせての併用施工(プレストレスと呼称されます)が必要であったと考えられます。
ポリのシートからの漏水は、普通にみられる現象であり、このため、産廃処理場では、一般に漏水監視体制(電気伝導度での監視システム)を行っています。
●そこで疑問です
根本的な施工計画の欠陥と言えるのではないでしょうか?
そもそも(汚染でなくても)水を溜めることができるものなのでしょうか?
廃棄物を入れたフレコンバックを隔離するためのものではないのでしょうか?
●汚染水の海への流出は指摘されていた
2012年10月Scienceにて
海洋化学者ケン・ブッセラー(米 ウッズホール海洋研究所)は、青森から千葉までの県別に底魚のセシウム濃度を調べ、
福島沖の結果が下がらないことから、放射性物質の流出が続いているのではないかと指摘。
(以下の3枚目の図をご覧ください)
http://cafethorium.whoi.edu/website/publications/Science-2012-Buesseler-...
2013年3月
東京海洋大学神田穣太教授らの試算
福島第一港湾内で汚染水の海への流出が止まったとされる2011年6月から約1年4ヵ月間に計約17兆ベクレルの放射性セシウムが海に流れ込んだおそれと試算。
東電は2011年4月に1週間で意図的に放出した汚染水放射性物質総量を1500億ベクレルと推計しているが、これの100倍以上にあたる(共同配信、以下東京新聞2013.3.24)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013032402000124.html
●貯水槽からの汚染水が海へ流れるか
東電は海までの距離があるから流出はないとしてます。
たしかに排水路など経由はないかもしれません。
しかし、地下へ浸透、それが海底面から湾内へ排出されることは十分に予想されます。
(産業総合研究所の論文があります)
2年を経過して、配電盤ネズミといい、おざなりな対応が生んでいる当然の帰結といえましょうか?
- jtgtさんのブログ
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