内田聖子のTPP交渉ウォッチ!vol.14

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┃内田聖子のTPP交渉ウォッチ!vol.14
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 熊本・大分地震の被災者・亡くなった方に
心よりお見舞い・お悔やみ申し上げます。
震源は東へと動き、どこで地震が起こってもおかしくない、
今も油断できない状況です。

 こうした中、先週中断となった国会でのTPP集中審議ですが、
昨日(18日)、本来は地震への対応、
被災者支援に全力を尽くすべきであるにもかかわらず、
また野党からの延期要請も受け入れず、
与党は特別委員会を開催しました。

何が何でも参院選前に批准したいとの与党の都
合が

先されている事態に強く抗議したいと思います。

 TPP協定の最大の問題点の一つは、極端な秘密主義です。
国会が始まり、野党が求めた交渉に関する文書が
政府から出されました。すべて黒塗りです。

 これを見て初めて驚いた方も多いと思います。
しかし、もともとTPP交渉の過程は絶対に秘密であり、
私自身もNGOとして何度も交渉会合に足を運びましたが、
絶対に中身は見せられない。
そもそも交渉に入る際に、
12か国で保秘契約というものが交わされ、
仮に協定が発効しても、交渉経過は4年間は秘密となっているようです。

何が秘密事項になるのか、保秘契約書には何と書いてあるのか。
それも「秘密」です。
まさに秘密保護法の際と同じで、何が秘密かも
秘密。
交渉をしている政府関係者にも厳しい保秘義務が課せられ、
100人以上いる日本の交渉官も縦割りで、
全体像を知っている人はほんのわずかです。

 ですから国会審議になってあのような文書が
出てくるのは当然で、もともとそのような異常な協定に
入ってしまったことが間違いなのです。
外交文書だから秘密は当たり前、と政府は言いますが、
もしTPPが純粋な貿易協定であれば、
あるいは私たちにとって本当にメリットがある協定であれば、
そこまで秘密にする必要はありません。
実際、過去の貿易協定では
交渉の経過もそれなりに明らかにされてきました。

 さてTPPの中身です。
自民党政府は当初「聖域は守る」などといいつつ
交渉に入りましたが
、その結果は惨憺たるものです。
お米や小麦、牛肉、豚肉などの主要品目の関税の多くは撤廃され、
今後も関税ゼロになるまで交渉がなされます。
日本の食料自給率は現在の39%から20%台にまで
落ち込みます。地域では農業が成り立たなくなり、
関連する加工業や流通、販売も打撃を受け、
地方には失業者が増えます。

 雇用は日本全体で心配されます。
投資が今以上に自由になれば、
日本からも多くの企業が海外に進出していくでしょう。
そうすれば日本の産業は空洞化し、雇用も失われていきます。
今アメリカでは今、大統領選も含めて大規模なTPP反対運動が
起こっていますが、その最大のテーマは、雇用問題です。
これは日本も同じことだと思います。

 食の
安心ではどうでしょうか。
日本はすでに世界で最も遺伝子組み換え作物を喜んで
輸入している国の一つです。TPPではモンサントやカーギルなど、
世界一の食物メジャーが今以上に日本に遺伝子組み換え作物を
売りつけようとしています。

モンサントは今では種や農薬の会社として知られていますが、
もともとはベトナム戦争で使われた枯葉剤を開発、販売していた企業です。
人を殺してでも儲ける企業の典型例です。
それが今、遺伝子組み換え作物で、
世界中の人びとの胃袋を支配しようとしています。

 TPPで一番危険なのは、ISD条項といわれるものです。
投資家対国家の紛争解決メカニズムで、
今多くの貿易協定の中に埋め込まれています。
一言でいえば、
投資家や企業が、利益を得られなかったからといって、
相手国の政府を訴えられ、勝訴すれば何千億円という賠償金を
得られるしくみです。相手国の政策や、規制、裁判の結果など
あらゆるものが企業の利益を害したとみなされれば、
提訴される危険があります。

例えば、ドイツでは脱原発政策に転換した際、
原発プラントに出資していたスウェーデンの投資家に訴えられました。
カナダでは、安全性の観点から医薬品の販売を許可しなかった
からとしてアメリカの製薬会社に訴えられました。
エジプトでは、アラブの春の後に最低賃金を定め労働者の権利を
保障しようとしましたが、外国の投資家に訴えられました。

アメリカでも今年1月、環境保護の観点から天然ガスパイプ
ラインの
開発をオバマ大統領が撤回したところ、カナダの開発会社から
提訴されました。
これらはすべてその国の裁判所ではなく、
世界銀行という国際機関の下にある仲裁定で審議され、
仲裁人はグローバル企業よりの国際弁護士など、
秘密で審理され、決定は覆すことができません。

まさにこれは、主権よりも企業の利益が優先される、
投資家や企業に、一国の政府と同じ地位を国際法上も与える
恐ろしいしくみです。
民主主義とまっこうから対立するしくみともいえます。
TPPが発効すればもちろん日本もあらゆるケースで
外国の投資家や企業から提訴される危険を持ちます。
賠償金は、もちろん私たちの税金から支払われます。

 アメリカでは大統領選の候補者
はTPP反対。
市民たちも徹底して反対しています。
サンダース陣営の反TPPスローガンの一つは
「民主主義と社会正義を取り戻せ!」です。
私たちもこの運動に呼応していきたいと思います。

★TPPを批准させない!国会行動★
毎週水曜日、17時から議員会館にて。
4月20日(水)は衆議院第二議員会館1階多目的ホール
18時半から議員会館前で抗議。野党にエール

内田聖子

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